第一生命にとってネックになりそうなのが、実はここにある。着服など直接の被害者であれば刑事告訴した上で、回収できるかどうか別として民事訴訟を起こせば株主には「刑事・民事両面で可能な措置は取った」と一応の言い訳はできる。

 経理的にも「損金」として処理し、回収が不可能と確定した場合、貸倒損失として算入できるので、税務処理上わずかでも傷は小さくできる。

 しかし、今回の問題では社会への体面を保つため顧客に被害金を弁済するとして、決して少なくない金額をどういう名目で捻出するかだ。

 本来ならば顧客に告訴してもらい、会社側の雇用責任を問う形で損害賠償を求めて民事訴訟を起こしてもらうのが法的には分かりやすいが、第一生命としても株主へのポーズとしてすべて認諾というわけにいかず、応訴せざるを得ないだろう。そうすれば企業としてのイメージは悪くなる一方だ。

 顧客にとっても訴訟費用は安くないし、手間暇もかかるので負担は大きい。また、89歳の高齢女性に刑事罰を科すことはそれほどの意味を持たないし、望みは弁済してもらうことだけだろう。

 第一生命は「今後、警察による捜査も含めた事実解明を踏まえて、被害にあわれた方への対応について検討してまいります」としているが、勤続50年超のトップセールスレディのせいで、非常に厄介な問題を抱えてしまった。