「ややこしい話をシンプルに説明する人」や「瞬時に自分の意見を出す人」を見ると、多くの人が「この人は頭がいい」と感心する。なぜ「頭のいい人」は、いつでも「スジの良い意見」や「わかりやすい説明」ができるのだろうか。
会員数100万人超の「スタディサプリ」で絶大な人気を誇るNo1現代文・小論文講師が、早く正確に文章を読み、シンプルでわかりやすい説明ができる頭の使い方を『対比思考──最もシンプルで万能な頭の使い方』にまとめた。学生から大人まで「読む・書く・話す」が一気にロジカルになる画期的な方法で、仕事や勉強に使える実践的なものだ。本稿では、特別に本書から一部を抜粋・編集して紹介する。

対比思考
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対立した2つの意見を出して、その中間を行く

「対極的対比を出して中間を行く」という思考方法を論文作成の基本方針としているのが、バカロレアです。フランスの大学入学資格試験ですね。

 これをパスすればどの大学にも進学できます。パリ第1大学でもパリ第13大学でも、ストラスブール第2大学でもリヨン大学でも。

 その試験問題の第1科目が「哲学」という名の小論文試験です。過去問のテーマをいくつか挙げます。

・「時間から逃れることは可能か」

・「道徳は最良の政策といえるか」

・「労働は人々を分断するか」

・「芸術作品を解釈することはなんになるのか」

・「文化の多様性は、人類の一体性を妨げることになるのか」

・「義務を認識することは、自由を捨て去ることになるのか」

 なかなか考えさせるテーマですね。そこでは、課されたテーマに対し、ただストレートに自分の意見を書くのではありません。

 そのテーマをめぐる2つの対極的意見をまず提示します。両極ですからどちらかがより有効であるとか、自分の意見として採用するとかできそうです。

 ところがそのどちらにも致命的な欠陥があることを示し、より説得的な第3案を自分の意見として提示します。

方法論なしで、文章力や説明力を伸ばすことはできない

 重要なことは、そのような論文スタイル、あるいは思考の型を理想として、フランスの大学受験生、つまりリセに通う高校生は指導を受ける、訓練をするということです。

「自分の意見」と呼べるものが自然発生するのでも、「文才」と呼ばれるものに任せるのでもなく、アイディア発想法の型の訓練が体系的に行われているのです。

 先に挙げたテーマを、高校生が時間内に書けるようになるためには、どうしたって指導が必要です。オリジナルのアイディア発想のためには徹底して型のトレーニングが必要だということです。

 トレーニングと呼ばれるもの自体、思い付きでやみくもにしても効果は期待できません。指導の原理・型が必要です。

 trainingの語源は、ラテン語のtrahere(トラヘーレ)で「引っ張る」という意味です。機関車が列車trainを引っ張るように。

「コレを書けば合格する」というような定番のコンテンツを教え込むのではなく、発想法の型を指導し、本来一つの正答を用意できない課題に柔軟に取り組めるようにすることが大事です。

 学ぶ方も、ネタを暗記するのではなく、方法を理解することを優先すべきなのです。

 この発想法は、学術のみならずビジネスにおける新しい企画の発案においても有効と思われます。過去の失敗パターンと過去の成功パターンが両極になります。

 過去の成功パターンが現在・未来の成功パターンになる保証はありません。しかしそれにしがみつき他社の「破壊的イノベーション」に太刀打ちできず、市場から撤退する例は枚挙にいとまがありません。

 過去の失敗パターンの冷静な吟味とともに成功パターンの踏襲と違う方向を模索することは重要でしょう。