「もやし」で考える
安いことはいいことなのか?
菅政権の目玉政策の1つに、携帯電話料金の値下げがある。今回は、「安いことは本当に良いことなのか」を考えてみたい。
とはいえ、考えるまでもなく、なんでも買い物をするなら安い方がいいし、どこで買っても同じような日用品であれば、なおさら安い方がいい。「もやし」など、その典型だろう。安いスーパーなら10円くらいで買うことができる。
もちろん、豆の種類の違いやヒゲを取るなど、企業努力で付加価値をつけた値段の高いもやしも売っているが、大抵の消費者は安いもやしに流れてしまうだろう。今の世の中で10円で買えるのは、もやしかチロルチョコくらいじゃないかと思ったら、チロルチョコでさえ今は20円するらしい。マルカワのオレンジガムなら、まだ10円程度で買うことができるようだが、それでも10円で買えるものなんてそうそうない。
しかし、10円で売られているもやしは本当に適正価格なのかというと、多くのもやし農家はカツカツの利益の中でかなり苦労していると聞く。それでもスーパーにとって、安いもやしは広告の目玉商品にもなり、スーパー側が利益を削って安く売ることさえある。
機能や性能で差をつけられる商品の場合、消費者に「少し高くても良いものが欲しい」という発想が出てくるので、10万円の炊飯器やもっと高いドラム式洗濯機がヒットしたりもする。このような機能・性能で差をつけて高い価格でも売ることができる商品の価値を、機能的価値という。
一方、機能・性能の差がほとんどない食品やトイレットペーパーを日用品(コモディティ)と言い、これまで機能的価値で高い値段で売られていたものが、消費者の心の琴線に響かなくなり、価格だけが購買意思決定要因になることをコモディティ化という。