がん未経験者の多くが「がん」の治療費の出費のイメージは300万円と答える。だが、実際にかかった費用は、入院、食事、交通費を含んで50~70万円が約7割。300万円以上の出費は、わずか約12%にとどまる。思い込みと現実に大きな乖離があるのだ。「安心」という幻想にムダにお金を払っている人が多いのではないか。

先進医療の実施はわずか。
元が取れない保険料

 医療保険の問題については第1回に紹介した。では「がん保険」はどうなのか。医療保険との最大の違いは、がんと診断された際に給付される診断一時金だ。保険会社の多くは「再発でも何度でも支払う」ことをうたうが、実際は、給付条件が複雑で受け取りのハードルは低くはない。

 そもそも、がん保険がこれほど売れる背景として、一般的にがんの医療費が非常に高額だと信じ込まれていることが挙げられる。

 2010年、アフラックが実施した「がんに関する意識調査」で、がんにかかったことがない人に、がんと聞いて最初に何を心配するか質問したところ、「治療費(経済的負担)」と回答した人は4分の1以上を占め、最多となった。

 さらに、がん治療にかかる費用を予想してもらった結果、「300万円より多い」が32%、次いで「200万円程度」が約22%となり、合わせて半数を超えた。人々が保険会社に付け込まれる隙はこの思い込みにある。

 がんにかかった人に実際の治療費を尋ねたところ、「50万円程度」が約38%、「100万円程度」が約32%で、計7割を占めた。がん未経験者の多くが予想していた300万円以上の出費は、わずか約12%にとどまる。思い込みと現実に大きな乖離があるのだ。