【名義預金判定のポイント2】管理処分権限の移行

 2つ目のポイントは「もらった人が、自分で自由にそのお金を使うことができたか」です。贈与という行為は、プレゼントと同じです。「プレゼントをもらったけれど、自分では使うことができない」というのはおかしな話ですよね。税務調査の現場では、「自分で自由に使えないのなら、もらっていないのと同じ」と扱われます。

 そのことを踏まえて、先ほどのケースを考えてみましょう。孫の通帳やキャッシュカードはA子が金庫の中に保管していたため、孫はお金を自由に引き出すことはできない状態でした。このことが調査官に知られたら「お孫さんが自分で自由に使える状況になかったのなら、贈与と認めることはできません。名義預金として修正申告してください」と言われるでしょう。

 このように、名義預金と判断されるポイントは、(1)「あげた、もらったの約束がきちんとできていたか」、(2)「もらった人が、自分で自由にそのお金を使うことができたか」の2つです。両方とも満たさないと、贈与の実態がないと認定され、名義預金として相続税の対象となり、追徴課税されてしまいます。

 ちなみに、贈与税には原則6年、悪質でも7年という時効が存在します。本来、贈与税の申告をすべき人でも、無申告のまま7年が経過すれば、贈与税の納税義務は消滅します。しかし、名義預金と認定された場合は、そもそも生前贈与と扱われないので、時効は適用されません。

 30年前にできた名義預金であったとしても、相続税の対象になります。名義預金は、相続税の税務調査で最も重点的に調べられるポイントになります。