若いころの日焼けで
顔はシミとシワだらけ
「パパ、これあげる」
ある日カツミさん(仮名・46歳)に、高校生の娘が小ぎれいな封筒に入ったお札大の印刷物をくれた。それは、某美容クリニックの1万円相当の割引クーポンだった。
「1万円割引は魅力的だけど、パパがもらってどうするんだ。ママにあげたら喜ぶんじゃないの」
訝し気に尋ねると娘は首を振り、言った。
「ダメダメ、ママは美容クリニックってあんまり好きじゃないみたい。だって、私が脱毛するのだって『高校生のくせに贅沢(ぜいたく)よ』って反対したし、自分はシミ取りやシワ取りに興味があるくせに、『レーザーとかボトックスって怖そう』とか言って、ぜんぜん受けようとしないんだもの。足やわきの下のムダ毛だってまだ電気シェーバーで剃ってるんだよ。ありえないでしょ」
確かに、妻は電気シェーバー派だ。美容クリニックを信じていない。足も腕もわきの下も、時折ごま塩か砂鉄状の短い毛が頭をのぞかせて面白いことになっているが、自分たちの世代はそうやって今の今まで過ごしてきたのだから、今さら「ありえない」と言われても変えがたい。