旅行業界の立場から見れば、GoToトラベルがうまく回り出したのは10月に東京が対象になってからでした。現実には、東日本の道県民の国内旅行では、行き先の大半は東京で、それらの道や県に来訪する観光客の多くも、東京からの観光客です。

 したがって、旅行業界から見れば、今回の自粛判断は「切れかかっていた最後の蜘蛛の糸が、何とか繋がった状態で留まった」と言えるでしょう。そう考えれば、経済を考えた国の判断の背景がよく理解できます。

今より事態が悪化した場合、
「Go To停止」はあり得るのか

 では今後、事態が一歩進んだ場合に「東京ではGo Toトラベルを停止する」という判断になるのでしょうか。

 あくまで私の予測ですが、そうはならないでしょう。その代わりに次のステージでは、「Go Toトラベルは全国一斉に停止し、期間を来年夏まで延長する」という宣言が下されるはずです。

 今回の都道府県知事に判断を委ねるという騒動は、一歩引いて見れば、国民の間に議論を起こし、世論の問題意識を喚起することにあったのだと思います。そこに大阪の吉村知事、北海道の鈴木知事が応えたことで、政府は第一段階の目的は達したと思えます。

 そして次の段階は、この冬、本格的に新型コロナ感染が拡大して、病床がどうしようもなく逼迫した段階です。そのときに判断すべきはGo Toトラベルといった個別政策ではなく、緊急事態宣言の是非でしょう。そして緊急事態宣言が下されれば、自動的にGo Toトラベルも全国的に一時停止になる。ただし、観光業界の救済のために停止したGo Toトラベルは来夏まで延長される。こういったシナリオがすでに検討済みなのではないかと、私は捉えています。

 結局、首相も都知事もお互いに判断を押し付け合ったこと、そして抜本的ではない合意に至ったことは、いずれにしても国民にはわかりにくい状況でした。けれど、政治ゲームの当事者同士にとっては、意味のあるやりとりだったのだと思います。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)