家族間での事業承継においては、トラブルが起こるケースが少なくない。業績上は問題なく経営できていた会社が、家族間の争いに巻き込まれ、経営がままならなくなることもある。事例をもとに事業承継の注意点を解説する。(弁護士 植田統)
最近増えてきているのが、事業承継にまつわる会社支配権争いである。親子間、兄弟間で会社をわがものにしようとさまざまな戦いが繰り広げられる。そこでは、会社法をうまく使うことが大事になる。会社法をうまく使えないと不本意な敗戦が待っている。
今回は、まず50%ずつの株式を持ち合い、会社経営がデッドロックに陥った(会社経営がにっちもさっちもいかなくなること)ケースを紹介していこう。
会社支配権をめぐって
兄弟間の争いが勃発
父親がX社を創業、子どもが2人いて、長男Aも次男BもX社に入って仕事をしている。
父親が生きている間は、株式を100%所有し続けた。亡くなった時に、A、Bで父親の財産をどう分割するかが話し合われたが、父親には会社の株式以外には見るべき資産もなかったことから、A、B各50%ずつ株式を相続するという遺産分割で決着した。