フロイド氏を通報した2人の少年

 人種差別を解消するためには何が必要なのでしょうか。

 ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニスト、ニコラス・クリストフル氏も書いているように、私もロバート・ケネディ元司法長官のような政治家が現れることが必須であると思っています。現在、世界中でさまざまな人が理想論を掲げています。しかし、それをどのように実現していくのかという具体的な道筋を示している人はあまりいません。

 フロイド氏が白人警官に殺害されたのは、もとはと言えば偽の20ドル札でタバコを買ったことがきっかけでした。フロイド氏のことを警察に通報したのは、彼からタバコを取り返せなかった黒人とヒスパニックの少年2人でした。

 少年2人にとって、レストランのガードマンをしていたほどの体格のフロイド氏は怖い存在だったのかもしれません。貧しい人間が同じように貧しい人間を通報した。これが事件の発端です。

 米国の黒人の人口は全体の約13%にすぎません。しかし凶悪犯罪の犯人に占める黒人の割合は約53%と極端に高いのも事実です。その警官が白人でも黒人でも被疑者への態度はおのずと厳しくならざるを得ないでしょう。

 国民に対して銃の保持を認めている以上、警官も自分たちを守らなければなりません。米国で1年間に殉職する警官の数は常に100人台後半で推移していましたが、2020年は8月までで200人を超える勢いにあります。新型コロナウイルスの感染拡大によって社会が不安定になり、警官にも普段以上の負荷が掛かっていることが分かります。

 ニューヨーク市は警察による過剰な取り締まりへの対策として、警官の体にカメラの装着を義務付けて、それなりの効果を上げています。