なぜ「黒人内の分断」が起こるのか

 問題解決の糸口となりそうなのは、逆説的なようですが、英国のヘンリー王子とメーガン妃だと私は思っています。メーガン妃は黒人の母親を持ち、英国の王子と結婚して貴族階級に入りました(2020年3月に公務を引退)。

 一度は貴族階級になったメーガン妃が、フロイド氏の死についてどんなメッセージを発するのか、私はとても注目していましたが、「かわいそうな事件が起きて残念」という程度のどこか他人ごとめいたメッセージが出ただけでした。

 彼女の言葉から私が感じたのは、黒人は自分の力で貧困から抜け出さない限り、人種差別の問題は解決しないという「黒人内の分断」です。これまで貧困から抜け出した黒人は、ほかの黒人の生活水準の向上にあまり尽力しようとはせず、どちらかというと白人社会に入るだけだと言われます。著名なアスリートたちが支援基金を作ったという話も聞きません。

 黒人の生活水準そのものを引き上げるための方策を考えるケネディ兄弟のような政治家が出現しない限り、黒人に対する人種差別問題は解決できません。

 同時にニューヨーク市が義務付けている警官へのカメラ装着のように、人種差別問題と共存する中でできる限り黒人が殺されるリスクを減らすことが大切です。

 人種差別問題を一瞬で消すような簡単な方法はありません。問題と共存しつつ身近な対策を着実に打ち、一歩ずつ改善させていくほかに道はないのです。