カンファレンスの成功は社会課題に対する光明

 実際、オフラインのセッションでは、オンライン参加者からリアルタイムで寄せられた多数のコメントをファシリテーターが画面を通じて紹介し、それに対してスピーカーが応えていくスタイルが印象的だった。会場では質問することに二の足を踏んでしまう参加者が、オンラインなら気楽に手を挙げられることで議論がより活発になっていったのだ。

 2日目のトーク・セッション前に登壇した遠藤氏は、「1日目のオンライン・セッションで多く出たキーワードが“希望”や“人のつながり”だった」と伝え、「パンデミックと分断の時代に、未来に希望を持てる対話が多くあったことをうれしく思う」と頬を緩めた。

「違い」を超えて、コロナ禍で気づくMASH UP(混交)する価値と意味今年の「MASHING UP」カンファレンスはオンライン配信がメインで行われた 写真提供:MASHING UP事務局

 昨年11月に開催された「MASHING UP カンファレンスvol.3」の終了後に、遠藤氏は「いま目の前で起きていることを見つめ直すことで、次の課題が見えてくる」とも語ったが、その後、新型コロナウイルス感染症の拡大という、世界中の人々の生活スタイルを変容させるほどの“社会全体の新たな課題”が発生した。そうした状況下、「MASHING UP」カンファレンスの今年のセッション内容と参加者の反応を見る限り、“D&Iの実現”という昨今の社会課題に対しては、たしかな光明が差している気がした。

 昨秋には予想だにしなかった今年のコロナ禍でのカンファレンスを、遠藤氏はさらにこう振り返る。
「(これまでは)インタラクティブ性やライブ感、スピーカーと参加者が同一の空間を共有できることの価値を重視していたので、オンラインでどこまでその体験を提供できるのかが大きな課題でした。オンラインで提供するコンテンツの作り方には、まだ改善すべき点が多くあります。参加者からのフィードバックも踏まえたうえで改善していきたいと思っています」(遠藤氏)