イノベーションと生活の豊かさをもたらすD&I
「MASHING UP」は、「女性からはじめるダイバーシティ」を標榜していることもあり、「MASHING UP」というメディア自体へのコミットメント(かかわり)やコミュニティーへの参加は女性が多いものの、カンファレンスの参加は男性が3割を占めた。また、昨年に比べて、今年のスピーカー(登壇者)に男性が増えたことも見逃せない。
企業経営におけるダイバーシティ推進のファーストステップ(起点)は「女性活躍推進」だが、いまや、シニア・障がい者・外国人…へと広がり、有料・無料を問わずに、こうしたカンファレンスにさまざまな人たちが関心を示し、参加するようになったことは日本社会の進化といっていいだろう。
ちなみに、今回の「MASHING UP」カンファレンスは、2日間のオンライン・セッション全てに参加できるチケットが7700円(学生は4400円)。1日のみが5500円(学生は3300円)と、決して安価ではない。それでも、1200名以上がカンファレンスに参加し、D&Iをキーワードに、社会全体の幸福や個人の生き方・働き方を追求したことの価値はかけがえのないものだ。
オフラインでも行われたセッション「D&Iがもたらすイノベーションと未来型組織、これからの社会」において、日本マイクロソフト株式会社 エグゼクティブアドバイザーの小柳津篤氏は、「D&Iの推進は、企業がこれからの時代で生き残るため。企業の価値を高めるため」と明言した。
生き残るため――組織のみならず、個人もきっとそうにちがいない。高齢化社会で生産年齢人口(15歳以上65歳未満の年齢に該当する人口)が減少するなか、職場や生活圏でそれぞれの価値観を持つ、さまざまな人が隣り合わせになっていく。個人個人が、いつでもどこでも誰とでも、相応にインクルーシブな距離感で向き合うことが、社会の豊かさにつながっていくはずだ。
「ダイバーシティをはじめとする、ソーシャルイシューに関する社会全体の感受性もどんどん上がってきているので、コンテンツ提供者としてもますます感度を上げ、質の高いもの、密度の高いものを提供する必要があると考えています。
カンファレンスは、その回を重ねるごとに、社会全般の変化を感じています。社会状況を見たり、参加者の声を聞いたりしていると、コロナの影響でいっそう社会的な課題に対する関心が高まっているようにも思います。
いまこのタイミングで、ダイバーシティの未来、またSDGsの先にあるものを考えることの意味は重く、この環境を好機と捉えています」(遠藤氏)
※本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティマガジン「オリイジン2020」からの転載記事「ダイバーシティが導く、誰もが働きやすく、誰もが活躍できる社会」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。