のれん代だけで4兆1000億円!

林教授 そうくると思ってね。とっておきの例を用意した。武田薬品工業の無形固定資産だ。

カノン 武田薬品工業って、風邪薬や目薬の会社ですよね?

林教授 ボクもこの会社の製品にはお世話になっている。タケダは日本のトップ企業だが、世界の製薬業界では欧米企業に太刀打ちできない。そこでアイルランドに本社があるシャイアーを買収した。その額なんと総額6.2兆円だ。

カノン のれん代が4兆1000億円ということは、それだけ高く買ったんですね。信じられない! タケダの年間売上はどのくらいなんですか?

林教授 おおよそ約2兆円だ。その会社が売上高の3年分以上の現金を払って買収したんだ。

カノン この会社大丈夫ですか。心配になっちゃいます……。

林教授 経営者は相当自信を持っているようだね。買収したシャイアーは希少疾患のバイオ薬で世界のトップ企業なんだ。そもそもこの分野の患者数は少ないが、競争相手も少なく薬の価格は高い。だから、数多くの特許権と有能な人材を持っているシャイアーはお金を生み出す力はずば抜けて高い。そこでタケダは大勝負に出たというわけだ。

カノン 世界で戦うって、大変なんですね。

林教授 それと、将来を見通す経営力だね。この勝負がどんな結末かは誰も知らない。だが、2020年に起こったコロナの猛威を見ていると、先見の明があったとも思えるね。答えはいずれわかる。

カノン そうですね。雑用係の私も関心があります。