「ゴマすり」はとかく軽蔑されがちだが、誰にでもやれるものではないし、ゴマのひとつもすれない人間が批判すべきではない――。そう説くのは、心理学者の内藤誼人氏。新著『ムリなく・賢く・自分を守る 人に嫌われない技術』の中から、ゴマすりについての考察を紹介します。
ゴマすりをバカにしてはいけない
ゴマのひとつもすれない人間が、ゴマすりのことを偉そうに批判してはいけない。
「なんだよ、あいつは部長にゴマばっかりすりやがって」と他人を悪く批判する前に、自分ですってみよ、と私は言いたい。
ゴマを一度でもすったことのある人ならだれでも知っていることだが、ゴマすりほど難しいことはない。そんなに簡単にできると思ったら、大間違いである。ゴマをするためには、信じられないほど高度な技術が必要とされるのだ。
イヤな相手に頭を下げたり、ペコペコしたりすることは、ストレスが溜まるし、屈辱を感じる。飲みたくもない酒を飲み、やりたくもないゴルフでもつきあわなければならない。
そのストレスたるや、まことに筆舌に尽くしがたいものがある。ゴマすりは、そういう苦労をしてゴマをすっているのである。
ゴマをすっている人間に、ゴマをすれない人間が偉そうな口をきいてはいけない。
それはちょうど、受験勉強の苦しさを味わったことのない人が、「勉強なんて、不必要だよ」と言うのに似ている。批判してもいいのは、自分でもその苦しさを味わった人だけであろう。