就職実績が押し上げる志願者数

――この大学志願者数推移のグラフを見ると、この20年間右肩上がりで増加していますね。

坂東 凸凹もあります。新しい学科や学部を作ると志願者は増えますが、3年もするとその効果が薄れてきます。そこで重要になるのが“出口”です。

 入り口のところで新しい勉強ができる仕組みを作るのと同時に、就職率を高める仕組みも作りました。それまでは学生部の中の就職課という位置付けでしたが、「キャリア支援センター」として組織を独立させて事務局とし、教員の組織にはキャリア支援部を作って、教員と事務局が一緒に学生の就職をサポートする形にしました。

――就職率の良さがカンフル剤のように効いたと。

坂東 女子大の古い先生たちの中には、「女性は“永久就職”すればいいんですよ」という考えの方もいらしたし、就職に関して「ちょっと社会勉強すればいいや」という学生もいました。

 これからの女性にとって、長くなった人生で、仕事をどう位置付けるかというのはとても大事なのだから、しっかり考えなさい、“就社”じゃなくて“キャリア”を考えなさいということで、1年生からキャリア教育に取り組み、就職のところまで1人1人しっかりサポートするようになりました。

――今でも教授として、「キャリアデザイン入門」といった授業をお持ちだとか。

坂東 キャリア基礎科目とキャリア選択科目を受け持っています。例えば日本の働く女性を取り巻く労働の状況や法律の問題とか、採用の変遷ですとか、そういったこともしっかりと勉強した上で就職に臨むようにしてほしいということです。

 また、社会人メンターという制度も設けました。女子大生の周りにいる大人の女性って、お母さんと学校の先生ぐらいです。そこで、さまざまな分野で働いている大人の女性にメンターになっていただきました。昭和女子大の卒業生に限らず、他の大学を出ている方にも多数登録していただいています。「私たちは学生の頃に全然そういうことを考えないで就職したので苦労し、損をした。私の経験を基に若い女子学生をぜひ応援したい」という方々がメンターに登録してくださっている。これは非常に良い制度だと思います。

――その成果が表れているわけですね。

坂東 大学通信の「実就職率ランキング」で、2011年に初めて1000人以上の卒業生のいる女子大でトップになりました。2020年で10年連続トップです。大学院進学者を除いた卒業生に占める就職者数の割合を示す実就職率は97%です。

 このことが、大学が学生の人生にコミットしている、1人1人をちゃんと応援しているという大きなメッセージになったと思います。受験生がたくさん来てくださるとありがたい。その中から良い学生が入学してくれるようになりました。「誰でも来てください」なんて言っていたら質が低下してしまいますし。