ダブルディグリーが与えたインパクト

 国際学部国際学科では、4つの海外大学の卒業資格を得ることができる。一つは先述した中国の上海交通大学であり、これに韓国の淑明女子大学校、ソウル女子大学校と、同じ世田谷キャンパス内に2019年からジャパンキャンパスを置く米国のテンプル大学が加わっている。

――同じキャンパス内に米国ペンシルベニア州立テンプル大学ジャパンキャンパス(TUJ)が校舎を借りて入っていますね。

坂東 それにはいろいろな経緯があるのですが、以前から前学長のブルース・ストロナクさんと個人的に知り合いで相談を受けていました。当時、TUJは港区の3つの商業ビルに分かれて入っている状態で、環境が整わなくて困っておられました。

 キャンパスのグローバル化を進めていく上で、私たちにも課題がありました。たくさんの留学生を送り出しましたが、うちに留学生が来てくれない。早稲田大学の国際教養学部のように英語で授業を行い、単位が取れるような仕組みを作るのが王道ですが、それをしていると10年はかかります。

 時間を買うという気持ちで、2017年にテンプル大学の本校に行き、交渉がまとまりました。以前、他の機関と交渉してもうまく実現しなかった経験があり、向こうの理事会には大丈夫かなという警戒感がありました。そこで、本学はそんなに大きくはないけれども、きちんとした実績のある大学で、約束は必ず守りますと。

――先生の品格がものを言った(笑)。日本のキャンパスにはどのくらいの学生がいますか。

坂東 東日本大震災の後は1000人を割りましたが、今は1300人です。アジアのベストアンドブライテストの留学生を惹きつけてくださいとお願いしています。

――昭和女子大の人気を高めた要因の一つに、日本と海外の大学の2つの学位が取れるダブルディグリーがあるかと思いますが。

坂東 昭和女子大で3年間勉強して、テンプル大学で2年間勉強すると日米の大学卒業資格が取れます。ただ受け入れに求められている水準が高くて、IELTS(International English Language Testing System)で6.0などと非常にレベルが高い。入学時から英語力を鍛えています。最初からダブルディグリーを目指す学生が入学してくるようになりました。以前は1学期に3人いけるかどうかでしたが、今はTUJの要求する英語力をもつ学生がどんどん増えています。

 上海交通大学はそれよりも早く、2013年に国際学科が動き始めてからダブルディグリー制度になって、2018年には10人、2019年には11人が2つの学位を取って卒業しました。

――中国で先行例ができてから今度は米国だったと。

坂東 最初に入学してきた学生は中国語未修で、発音も全く最初から教えなければならない状態でした。中心になって教えてくださった先生がとにかく厳しい。学生たちが、「私、こんなに勉強するつもりで昭和女子大学に入ってきたんじゃない」と泣き出してしまった、という話も聞いています。手加減せずに本当に勉強させて上海に送り込む。そうすれば、できるようになるのですよ。

――上海交通大学を卒業したことになると。東大に入るよりも難しいといいますよね。

坂東 はい。上海交通大学は国家重点大学です。中国の受験勉強は日本の比じゃないので、本当のエリート。日本の方はあまり感動してくださいませんが、中国の方は「ほんとですか!上海交通大学すごい!!」と言って驚いてくださいます。

※第2回(1月27日公開予定)に続く