終電10分繰り上げで
夜間作業の能率向上が期待

 コロナ禍のためマスクを着けての作業になるが、安全確認のため大きな声も飛び交う。熱気でトンネル内の気温が上がったのか、現場の興奮が乗り移ったのか、筆者のメガネが曇り始めた。新しいレールは現場で長さを調整し、余分をカットして設置する。締結装置を締め付け、電気配線を接続する。

写真:日比谷線東銀座駅付近で実施中のレール交換作業(5)Photo by T.E.

 報道公開はここで終了したが、この後、機材を保守用車両に積み込み、保守用車両を使用してレール交換箇所の試験走行を行い、軌道の検測など安全確認をして深夜3時過ぎに夜間作業は終了する。こうして毎夜、少しずつ作業を進めていき、長い時間をかけてポイント全体のレール交換を完了させるというわけだ。

 実際の作業を目の当たりにすると、作業前後の準備時間と、保守用車両の移動時間を除いた実作業時間は限られており、終電の約10分繰り上げで生じる余裕は決して少なくないとの印象だ。1日10分でも1週間で1時間以上、1カ月で4時間以上、つまり1日分の余裕が生み出せる。

 しかも複数の夜間作業が同時並行で進行しており、保守用車両の走行ルートを確保するためには工事箇所、時間などさまざまな調整も必要になる。ひとつの夜間作業だけでは見えてこない難しさもそこにはある。作業時間に余裕が増えれば調整にあたっての選択肢が増え、全体としての能率も上がるはずだ。

 今年開催予定だった東京オリンピックでは期間中、終電を2時頃まで延長する計画だった。そうなると夜間作業が実施できなくなるため、1~2年前からさまざまな工事や検査のスケジュールを調整していた。ところがオリンピックが延期となり、ただでさえ余裕のなかった2021年の工事スケジュールは逼迫(ひっぱく)している。現時点でオリンピック開催や終電延長実施の可否は不明だが、工務部担当者は来年度分の工事を前倒しで進める予定だと語る。夜間作業の悩みは尽きないようだ。