一方、仕事と休暇を明確に分離できるかという労務管理上の問題も指摘されており、成果ではなく労働時間で仕事を評価する傾向の強い日本企業では、ワーケーションは「休みの合間に働く」のではなく「休日でも働かされる」ことにしかならないのではないか、という批判もある。

 いずれにせよ、仕組み作りも含めて、これから本格的な検討が始まろうとしているところであるが、JR東日本と西武HDがその旗振り役になろうというのである。

普及を促進するために
具体的なプランを提供

 もちろん、その背景には両社が置かれた苦しい現状がある。JR東日本の11月の新幹線など中長距離利用者の鉄道営業収入(速報値)は前年比45.6%で、第1四半期(4~6月)の同10.6%、第2四半期(7~9月)の同28.1%から回復傾向にあるとはいえ、前年の半分以下の水準にとどまっている。西武HDも11月のホテル業の客室稼働率はシティーホテルが34.1%、リゾートホテルが44.1%と厳しい状況が続く。

 両社の取り組みは、いわば新幹線の空席とホテルの空室を持ち寄って、何か新しい活用方法はないかと考えた結果と捉えることもできる。ただ、そうした事情があるにせよ、ワーケーションを普及させるためには、企業も個人も様子見をしている現状を打ち破る突破口が必要になる。そのために必要なのは具体的なプランの提供である、というのが両社の結論であった。

 さらに必要になるのは、企業がワーケーションを導入する大義名分だ。両社は、企業も個人も健康で幸せな状態を作る「ウェルビーイング」の取り組みが、企業の業績向上と優秀な人材の継続的な確保につながり、長期的には企業価値の向上につながるとした上で、ウェルビーイングをベースに置いた、新しい働き方・暮らし方のひとつであるワーケーションの推進が有益であることを社会に提案し、そのライフタイルの浸透を図ろうというわけだ。

 そこで両社が提案するのが、法人向けの「ボランティアワーケーション」という新機軸のワーケーションだ。企業経営においてSDGs(持続可能な開発目標)が重視される昨今、業務のうち1割をボランティア活動に充てるような企業も出てきている。ボランティア活動であれば労務管理の問題も発生せず、また地域への貢献にもなる。

 まずは軽井沢をモデルケースとして、JR東日本の新幹線往復チケットと軽井沢プリンスホテルの宿泊をセットにし、イチゴ農園(軽井沢ガーデンファーム)でのボランティア体験を組み合わせたワーケーションプランを提供し、今後は苗場や雫石にも順次展開するとしている。

 3泊から6泊までの短期滞在型で1室1泊当たり1万6000円から、7泊から27泊までの中期滞在型で同1万5000円から、28泊以上の長期滞在型で1泊1万3000円からという価格設定の妥当性や、ボランティアが地域にとって本当に有益なものになるかなど、まだまだ検討が必要な課題は多い。しかし、コロナ禍においても両社が立ち止まらず、ワーケーションの普及に向けた第一歩を踏み出したということについては今後も注目していきたい。