悪徳業者の実話「うちでアパートを建てませんか?」
先日、「あるハウスメーカーから『このままだと将来、多額の相続税がかかり、税務署から土地を差し押さえられるかもしれませんよ? うちでアパートを建てて相続税対策をしましょう!』と営業を受けています。この話が本当なのか、プロの目から見てほしい」という依頼がありました。
相続税の計算をしたところ、小規模宅地等の特例を計算に入れれば、相続税の負担はたったの50万円。話を聞くと、その方は現在ご両親と同居しており、今後も同居を継続する予定でしたので、将来的に小規模宅地等の特例が使える可能性は十分にあります。
にもかかわらず、ハウスメーカーが提示した無料の試算レポートには「小規模宅地等の特例は考慮しておりません」と小さく書かれており、1000万円以上の相続税が発生する結果になっていたのです。
もしその方がセカンドオピニオンをせずに、ハウスメーカーの提案のままアパートを建築していたらと思うと、複雑な気持ちになります。これは氷山の一角にすぎず、世の中ではこのような営業が山ほど行われていると思うと暗い気持ちになります。
相続税の計算は「無料」ではできない
相続税の試算(現状分析)は、医療でいえば人間ドックのようなものです。
世の中で行われている相続税の無料試算サービスは、無免許医師から、「診断の結果、あなたはがんです(血液検査等はしていませんが)。このままだとまずいので、抗がん剤治療を始めましょう」と言われるのに近いことだと私は思っています。※もちろん、ひとつひとつの試算を税理士に有料で依頼し、きちんとしたものを作成している会社もあるので、すべてダメというわけではありません。
将来発生する相続税を実態に近い金額で算出するのは、無料で行えるほど簡単ではありません。財産の評価額を正確に把握し、遺産の分け方を決め、小規模宅地等の特例が使えるかどうかを慎重に判断し、初めて実態に近い相続税額が算出できます。
相続税対策で一番大事なのは、現状の正しい分析です。「安物買いの銭失い」にならないよう、用心してください。