ただ、60歳から65歳までの再雇用者が、その役割を十分に果たさず機能不全を起こしており、人材不足を補う「戦力」になれていない実態が多々見受けられます。

 例えば、再雇用者の「モチベーションの低下」が課題となっている企業がそれです。これを解決して高齢者を戦力化しないことには、高齢者を継続雇用する意味がないのです。

 モチベーション低下の原因は「働きぶりが評価されない」「働きに見合った賃金が支払われない」「知識のアップデートに必要な研修を受けさせてもらえない」など、いろいろですが、モチベーションを向上させ、「戦力」になってもらうために、これまでの「定年後再雇用」を見直して「定年延長」を導入するというのも有効な施策の一つです。

 重要なことは、現場の意見をしっかり吸い上げ、自社の現状を把握すること、そして見直しが必要であれば見直しをし、高齢者を戦力化して、しっかり仕事をしてもらうこと。そこができていれば、70歳までの就業確保措置の検討もスムーズに進むのではないでしょうか。

労働者がやっておくべきことは
「自分の腕を磨く」こと

 60歳の定年後は、肩書きも部下もなくなります。1人のプレーヤーとして仕事をしなければなりません。70歳まで会社の戦力として働こうと思えば、1人で仕事をする能力を高める必要があります。

 ITツールを使えず、テレワークによるWeb会議にも参加できない、時代の変化についていけないような高齢者には働く場所は確保されない厳しい時代がくるということを覚悟しておかなければなりません。

 重要なのは、定年までに専門性を身につけておくこと。専門性があれば、定年になったところで、フリーランスの道を選択することも可能なのですから。

 2025年には年金の受給開始年齢が65歳になります。いやが応でも働かなければならないわけで、頼りになるのは自分の腕一本。腕に磨きをかけて、人生100年時代をいきいきと過ごしたいものです。

◎三戸礼子(みと・あやこ)
特定社会保険労務士。1965年生まれ、山口県出身。2007年1月社会保険労務士登録、2015年5月特定社会保険労務士付記。2000年1月に大槻経営労務管理事務所https://www.otuki.info/)に入所以来、主に大規模事業所の担当者として給与計算や社会保険実務などの業務に従事。2017年10月からは労務コンサルティング事業部に所属。社会保険労務士の3号業務である相談業務に従事し、複数の事業所を担当。前職が大学の文部技官であったこともあり、実務セミナー講師や執筆活動にも注力。学生への指導や教授の学会資料の作成サポートなどで培った経験を生かし、「わかりやすい説明・伝わる内容」をモットーに活動。専門分野は「ハラスメント」。趣味は、読書と散歩。「晴歩雨読」の生活にあこがれている。