この改正は、全面的に企業の負担により、定年退職後最長10年もの期間、定年退職者の就業の面倒を企業に見させようとするものです。

 そのため、国は企業にあまり過剰な負担がかからないよう、「雇用」という働き方にこだわらず、フリーランス契約や起業支援等といった選択肢も認めるものになっています。

「高年齢者雇用安定法」が
改正される理由

「高年齢者雇用安定法」はなぜ改正されるのか?

 つまるところ、「少子化」「高齢化」が全ての元凶なのです。

 少子化の現象は約50年も前から起きています。それが経済・社会に多大な影響を及ぼすことになるため、様々な対策が講じられてきました。

「労働」の観点から言えば、少子化とは「将来的な労働力が減少すること」を意味します。

 また、総人口に占める割合の多い年齢層が高齢者層(65歳以上)に移行する高齢化も相まって、いよいよ労働力人口(15~64歳)の減少は加速しています。

 この社会問題については、実はすでに30年以上も前から対策が打たれているのです。

 30有余年前、定年年齢はまだ55歳でした。1986年に定年年齢を60歳とすることが努力義務として掲げられ、続いて1990年に65歳まで継続雇用することが努力義務として新設されました。

 その後、10有余年を経て、1994年に60歳定年が、2000年に65歳までの雇用の確保措置が、義務化されたのです。

 そして現在に至り、ようやく60歳定年と65歳までの雇用が根付き、希望者全員が65歳まで働き続けられる仕組みが整ったのです。

 ところが、本丸はここではない!国の狙いは、さらなる「定年年齢の引き上げ」、そして、「定年の廃止」にあります。その布石として、今回、「70歳までの就業機会確保措置」の努力義務の改正が行われたというわけです。

 これまでの施策からもわかるように、制度が義務化されるまでにはかなりの時間を要します。70歳定年が実現するのは、今年の新卒者が50代になる30年後かもしれません。また、定年という仕組みがなくなるのは、今日生まれた子が高年齢者の仲間入りをした頃になるかもしれません。

 いずれにしても、「働く意思と能力」が有る限り、年齢に関係なく働かなければならない時代が来るということです。