企業が講じる
「努力義務」とは
今回の改正による「70歳までの就業機会確保措置」で企業がなすべきは、前述のとおり、(1)~(5)のいずれかの措置を講ずる努力をすることです。とはいえ、企業は何をどこまでやっておけば、努力義務を満たしたことになるのか?
これについては、厚生労働省が出している「高年齢者雇用安定法Q&A」に次のような記載があります。
「改正法施行の4月1日時点で、70歳までの就業確保措置が講じられていることが望ましいが、検討中や労使での協議中、検討開始といった状況も想定される。まずは、制度の内容を把握していない事業主や検討を開始していない事業主等に対して、制度の趣旨や内容の周知徹底を主眼とする啓発・指導を行う。」
つまり、今は、措置の実施に向けて、制度の内容を把握し、何らかの検討を始めれば良いということです。
ところが、そう悠長にも構えておられないことを伺わせる、民間のシンクタンクの調査結果(2020年11月に公表)があります。それによると、70歳までの就業機会提供の努力義務の対応について、約86%の企業が定年後再雇用を「すでに実施」または「検討中」と回答し、また、約43%の企業が「定年延長を検討中」と回答しているのです。少子高齢化による人材不足への危機意識を持っている企業では、65歳以上の高齢者の活用についての検討をすでに始めていることがわかります(パーソル総合研究所「企業のシニア人材マネジメントに関する実態調査結果報告書」による)。
改正への対応前に
企業がすべきこと
さて、企業は、70歳までの就業確保についての検討を始める前に、まずは65歳までの雇用のあり方を見直しておくべきでしょう。
前述の調査結果からも明らかなように、70歳までの就業確保措置の選択肢として最も選ばれやすいのは、やはり継続雇用制度であり、中でも「定年後再雇用」です。現行の65歳までの雇用の義務化においても、8割以上の企業が定年後再雇用を導入しています。その土台がある故、65歳以降も引き続き再雇用を選択することになる企業が多いと思われます。