野田第3次改造内閣でもエネ政策の矛盾が露呈 Photo:REUTERS/AFLO

 東日本大震災後に中断していた原子力発電所の建設が初めて再開される。Jパワー(電源開発)の北村雅良社長が1日、大間原子力発電所(青森県大間町)の建設工事再開を県や町議会に伝えた。同原発は2008年5月の着工後、全体の37.6%まで工事が進んだところで中断していたが、1年半ぶりに再開されることとなった。

 全国に50基ある原発は大飯原発3、4号機を除いて、再稼働の見通しも立っていない。なぜこの時期の再開となったのか。

 きっかけは、枝野幸男経済産業大臣が9月、青森県の三村申吾知事を訪れた際、工事継続容認を表明したことである。前日に決定された政府の新エネルギー・環境戦略には、「2030年代に原発ゼロを目指す」という文言が盛り込まれたにもかかわらず、早速矛盾を露呈する形となった。「もともと、国策会社のJパワーは、国のお墨付きさえあれば行動は早い」(電力業界関係者)との言葉通り、政府の方針に素早く反応した形だ。

 政府のエネルギー戦略は矛盾と混迷を極めている。もともと、「原発ゼロ」の文言自体が脱原発の声が高まったのを受けて、選挙を意識して盛り込まれたものだ。ただ、原子力協定を結ぶ米国や経済界の反発で、戦略自体の閣議決定を見送るというあやふやな結論となった。結局は「脱原発派の人からの抗議の声のほうが大きい」(民主党中堅議員)のが実情だ。

 むしろ、原発ゼロに反対する経済界からは「新戦略は何も決定事項がなく、さらに原発容認に傾く可能性もある」(電力業界関係者)と期待の声が上がる。1年以上かけて決まった戦略はもはや、何の体もなしていない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 森川 潤)

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