「コロナ禍によって働き方が変わった」ということは、大なり小なり誰もが感じていることだろう。リモートワークやオンライン化がより普及すると雇用のあり方が変わるだけでなく、連動して組織全体を変えていく必要がある。2020年に『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を執筆した筆者が、日本マクドナルドやメルカリでマーケティング・人事全般の責任者を務めてきた経験をもとに、これからの組織はどうあるべきか紹介していく。(Almoha LLC 共同創業者 唐澤俊輔)
「ジョブ型雇用」の導入だけで組織は変わらない
私は、日本マクドナルドやメルカリ、SHOWROOMといった、異なる組織で組織開発を推進してきた。外資系と日系、外食からITやエンタメビジネス、大企業とスタートアップなど、組織づくりにおいては異なる両端を経験してきた。そうした経験から、組織像に絶対解はなく、事業モデルやフェーズによって異なるべきだと考えるようになった。
しかし、コロナ禍で働き方は大きく変化し、もはやこれからの組織像は、この環境変化にいかに適応させながら最適な組織をつくるかということに集約されつつある。実際、リモートワークによる出社機会の減少に加え、会議や商談のオンライン化も確実に進んでおり、移動時間が減ることにより生産性が向上しているとみる企業が増えている。会議や商談のオンライン化は、一度その利便性を体験すると、もう戻ることはできなくなってしまう。
これは、もはや不可逆な変化といえ、アフターコロナの世界ではオンラインでの世界がベースとなり、適宜リアルも有効活用するという形で、オンとオフの主従が逆転していくだろう。
働き方の変化については、リモートワークにおける労務管理の議論に始まり、オンライン上での労働生産性の向上方法、そしてオフィスの存在意義などへと、世の議論は発展してきた。そして昨今では、リモートワークの環境下で細かな時間管理や業務管理ができないことを理由に、成果主義で人材マネジメントを行うという論調が強くなっている。いわゆるジョブ型雇用を導入しようという動きである。
ジョブ型雇用というのは、ジョブディスクリプション(職務記述書。採用募集や異動時などに職務内容を明確化するためのもの)を作成し、そのジョブに対する成果物でもって人材マネジメントをしようという趣旨のものだが、本来はそれだけで済む話ではない。人事評価制度の根幹を変えることになるので、報酬体系も当然変わってくるし、そもそも採用の方針から変えなければいけない。もっと言うと、これは組織戦略の根底から見直すことが求められる議論なのだ。