制約なきリーダーシップ

 リーダーシップ開発の古いモデルである例の定型モデルはシンプルさが魅力だが、2つの点で現実と相容れない。1つは、リーダーシップのありようは各リーダーごとに異なるということ。もう1つは、ある人が使うテクニックは必ずしも別の人に当てはまらないということである。

 旧モデルはまた、自分の果たした貢献が認められ高く評価されたと感じた時に生まれる特別な意欲の高まりをないがしろにしている。そのような時に特別に意欲が高まることを我々は皆知っている。

 前述したギャラップのメタ分析では、自分の長所を活かすことを毎日求められている従業員は、好成績のチームにいる確率が他より38%高く、最も高い顧客満足度スコアを得る確率が44%高く、離職率が最も低いカテゴリーに属する確率が50%高かった。そしてリーダーたちも、自分の強みをどう活かすか教えてもらえばやはり意欲が高まるのである。

 ある小売企業で強みに基づくリーダーシップ開発モデルを導入し、その9カ月後に地区シニア・マネジャーと地区マネジャーを調査したところ、意欲指標の平均スコアが25ポイントも急上昇していることが最近わかった。ハンプトンが最近行った業績分析によれば、客室1室当たりの売上げは、最も意欲の高い総支配人が運営するホテルにおいて、そうでない総支配人のホテルより6.5ポイント高いことが明らかになった。この意欲の差は、ホテル全体で見れば数十万ドルもの売上げの差を生み出すことになろう。

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 私たちは新しいモデルを必要としている。他の人に応用可能だが、同時にそれぞれのリーダーごとの独自テクニックも考慮に入れられるモデル。一度に何百人ものリーダーを訓練できる安定性を持つが、同時に新しい慣行や他のイノベーションをリアルタイムで取り込んで皆に広めるだけのダイナミックさを持つモデルが必要である。

 幸い、そのモデルの原型は私たちの身の回りにあふれている。どのような種類であれコンテンツのつくり手は、そのコンテンツを意義のあるものにしなければならないと認識している。そのための最も効果的な方法は、「あなた」というアルゴリズム・モデルを通してコンテンツを選別することなのだ。

 もちろん、そのような新しいモデルが生まれれば、すぐさま組織の壁を突き破って広がっていくことは避けられないだろう。それは望ましいことでもあるのだ。そう遠くない将来、いまはまだよく見えないが、この世界のどこかにそのような場所がつくられるだろう。そこには世界じゅうの優れたリーダーから最高のテクニックやアドバイスや実践的イノベーションが集められ、1人ひとりに固有のリーダーシップ・アルゴリズムに従ってそれらを選別し、あなたに最も適したテクニックを提案し、あなたがそれらのテクニックにどう反応したかを学習して選別の精度を高めていくような場所が──。それはつまり、あなたに最もよく似たトップ・リーダーたちの力を借りて生まれた、あなた自身のためのリーダーシップの個人コーチとなるのである。

 このコーチは、あなたを第2のリチャード・ブランソンやウォーレン・バフェット、スティーブ・ジョブズに変身させるわけではない。それよりもはるかに価値のあることをするのだ。つまり、あなたしかなることのできない最高のリーダーになれるよう、あなたを手助けするのである。