さらに付け加えると、銀行は、こうした事業再生ファンドに投資家として出資しておくことによって、ファンドが融資先の経営再建の努力をして予想より多い回収をした場合には、その果実を数年後に享受することも可能だ。また、ファンドに一旦売却して融資先の過剰債務問題を解決する道筋が立てば、その融資先の債務者区分を正常先として再び取引を拡大していくことも可能であろう。また、ファンドの側からも、再生支援にあたっては、従来のメインバンクからの資金繰り支援を要請することが多々あり、銀行と融資先との絆が切れるわけでもない。

 余談ながら、銀行自らが主導してこうしたファンドを作って貸付債権を譲渡するようなスキームがバブル崩壊後に散見されたが、これは実質的にはいわゆる「飛ばし」に該当するものであるばかりか、銀行がファンド運営に関与している限り、先に述べた3つの問題点を解決することにはならない。

 政府にとっても、政府系金融機関や官民ファンドから全国の無数の企業に劣後ローンなどを注入して過剰債務を更に悪化させて問題を長引かせるよりも、事業再生ファンドを活用した民間での処理を促進させることにより、政府が資金を投下する先は銀行だけにできる。ちなみに、政府系金融機関や信用保証協会は往々にしてファンドに債権を譲渡したり債務免除したりすることに抵抗を示して事業再生の妨げになることがあるが、今回の局面では民間と歩調を合わせた取り組みをぜひお願いしたい。

 一刻も早く官民が協調して一定規模の事業再生ファンドを準備し、官民ともに貸付債権等の譲渡を実行していくことによって企業の過剰債務問題を短期間に解消することこそ、ポストコロナの経済再生に必須の要件である。