父が他界、兄妹2人で
遺産相続しようとするが……

 母が老人ホームに入居してから1年後に父は他界しました。長男であるAさんは喪主となり父の葬儀を滞りなく取り仕切りましたが、初めての経験で精神的にも非常に疲れ果ててしまいました。四十九日を迎え、ようやく財産分けの手続きを考えることになりました。

 父の遺産が5億円と多額であり、相続税の基礎控除4800万円(=3000万円+600万円×3人)を完全に超えているため、相続税申告が必要であることは容易に想像がつきます。そこで、毎年確定申告をお願いしている税理士へ依頼しました。

 その際、母が認知症であることは税理士に伝えませんでした。兄妹2人で均等に財産を分けることは決まっていますし、相続税には何の影響もないと考えたからです。それに、税理士から依頼されたのは相続税を計算するための資料だけであり、母の容態のことは特に確認されませんでした。

 兄妹が均等に相続するためには、父の相続人である(1)母、(2)Aさん、(3)妹の3人で遺産分割協議を行い、書面(遺産分割協議書)へ署名押印(実印)する必要があります。Aさんは、兄妹2人のみが均等に相続することで相続人全員が納得していることを税理士へ伝え、その内容を反映した遺産分割協議書を作成してもらいました。

 Aさんと妹が署名押印(実印)に対応することは問題ありませんでしたが、母は重度の認知症であるため、Aさんの妻に代筆させ、母の実印を押印して対応することにしました。もちろん、妹の了解は得ています。

 税理士へは署名押印済みの遺産分割協議書(写し)を渡し、相続税申告書を完成させ、10カ月の申告期限ギリギリで、税務署への申告手続きをしてもらいました。あとは、相続税を納めるだけ――。