ファミリーマートが展開する24時間営業のフィットネスクラブ「Fit&GO(フィットアンドゴー)」が事業譲渡された。ファミリーマートからの正式発表はない。筋トレマニアとして知られ、3月1日付で副会長となる澤田貴司社長が主導して始まった新規事業がなぜ撤退に追い込まれたのか、事業売却の背景を考察した。(流通ジャーナリスト 八神啓太)
趣味がトライアスロンの澤田社長
肝いりだったフィットネス付属コンビニ
3月1日付で副会長となるファミリーマートの澤田貴司社長の趣味はトライアスロンで、記者会見でも何度か「今日も筋トレをしてきた」と語るほど、筋トレマニアの側面をうかがわせていた。そんな澤田社長の肝いりで始まった事業が、コンビニ店舗併設型のフィットネスクラブ「Fit&GO」(フィットアンドゴー)だった。スタートした2018年当初は、5年後をめどに300店を目標とし、都市部に限らず、郊外のロードサイドなど多様な立地で展開する計画だった。
ただ、澤田社長の交代発表の翌日、この事業を東海エリアを中心にフィットネスクラブを展開するフィットイージーに譲渡することが明らかにされた。ファミマではなく、譲渡先が1月19日に公表した。
フィットアンドゴー1号店は2018年2月14日、東京都大田区の加盟店「ファミリーマート大田長原店」の店舗の2階にオープン。フィットアンドゴー自体は、ファミマが直営店として運営する形式で、将来的には既存のファミマ加盟店オーナーが、新たにフィットアンドゴーに加盟することで、収益増加を図る絵を描いていた。
18年当時は、24時間営業など加盟店の負荷が過重だとの批判が業界全体を揺るがす前だったが、当時から加盟店の収益向上は大きな経営課題として認識されていた。
そこで、白羽の矢が立った一つの事業として、フィットネスクラブがあった。ファミマがフィットネス事業を開始すると聞いた時、その唐突さに違和感を禁じ得なかった。コンビニの事業はあくまで物販であるが、フィットネスはトレーナーなど専門人材が必要で、利用者も限られる。万人を相手にするコンビニとどの程度の相乗効果があるのか疑問だった。
ただファミマとしても、それなりのデータの裏付けがあった。