伊藤忠商事の子会社でコンビニエンスストア業界2位のファミリーマートが社長交代を発表。伊藤忠でファミマを所管してきた「第8カンパニー」トップが新たに就任するが、コロナ禍に苦しむ加盟店を守りつつ成長を成し遂げられるか。その道は決して平坦ではない。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
「ファミマをなめるな」で強気だった澤田社長
埋まらなかったセブンとの差
「セブン-イレブンには、ファミマをなめるなよ、と言いたい」「コンビニ市場はすでに飽和している」――。こんな強気の発言で鳴らした異色のコンビニ経営者は、志半ばで退く。
コンビニエンスストア業界2位のファミリーマートは、2016年に社長に就任した澤田貴司氏が3月1日付で副会長となり、後任に親会社である伊藤忠商事の細見研介執行役員が就任する人事を発表した。
澤田氏も伊藤忠出身だったが、1997年に「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング(FR)に転じ、その後のフリースブームの火付け役として知られた。柳井正・FR会長兼社長から後継の打診を受けたが辞退して退社。企業支援会社のリヴァンプなどの設立を経て、16年にファミマ社長に就任した。
就任当初の澤田社長はインタビューなどで強気の発言を連発。“コンビニ飽和論”を一顧だにせず、拡大路線をひた走っていた業界首位のセブン-イレブン・ジャパン(SEJ)に対し、挑発とも取れる姿勢をむき出しにしていた。
もっとも、当時も今もSEJとファミマの差は歴然としている。国内店舗数は昨年末時点で、SEJの2万1048店に対し、ファミマは1万6663店。さらに日販(1店舗の1日当たりの売上高)は20年2月期、SEJの65.6万円に対してファミマは52.8万円と、その差は10万円超。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大で日販はいずれも悪化したが、下落幅はファミマが大きかった。