運用計画を見直すサイクルはどのくらいがいいのか。理論的には「随時」以外の答えはないが、現実はそうなっていないことが多い。

 この問題を痛切に感じるのは大きな年金積立金の運用だ。年金運用では、国内株式を何パーセント持つかといった資産分類(資産クラス)ごとの配分比率の決定(アセットアロケーション)が運用パフォーマンスの9割以上を説明する。この大枠を定める「基本ポートフォリオ」は、年金財政の検証作業である財政再計算が5年ごとであるため、5年単位で見直されるのが通例だ。公的年金の巨額の積立金運用でも同じだ。

 5年単位で「基本ポートフォリオ」を決めて、これを1年単位で「検証」と称して通常は追認し、資産配分が目標から一定以上乖離した場合に(株式の値上がり・値下がりなどで)、「リバランス」と称する配分回復のためのルールをおおまかに決めておくといったあたりが、現実には標準的な運営だ。

 しかし、年金財政に大きな影響を与えるはずの長期金利の変動は随時起こりうるし、リーマン・ショックのような金融市場の変化も、好都合に年度の節目に起こるわけではない。基本ポートフォリオを決めて、それを固定していていいと割り切るのは、現実の制度運営上やむをえない面があるとはいえ、運用の影響の大きさを考えると、いささか「横着」に過ぎるのではないかとの思いがぬぐえない。

 もちろん、毎日毎日アセットアロケーションの変更に至るような新しい情報があるわけではないし、巨額の資産の配分を動かすには時間がかかる。しかし、兆円単位の資産運用の成否の影響と、検討のためのコストを考えると、検討はもっと頻繁であってもいい。

 筆者は国家公務員の年金積立金の運用に関する委員会の委員を務めているので、これは、不満であると同時に自己批判でもある。「横着なのはお前だろう」と言われたら、「はい」と謝るしかない。