障がいのある求職者が持つ特例子会社のイメージ
一般的なオフィスよりも、特例子会社は障がいに配慮された設備や機器が整い、障がいのある従業員へのケアも行き届き、また、障がい種別に配慮した業務の切り出しもしっかり行われているケースが多い。しかし、その一方、特例子会社に対する入社前後でのイメージが乖離し、短い期間で離職してしまう障がい者も存在する。
洪 弊社書籍『障害者雇用は経営課題だった!失敗事例から学ぶ、障害者の活躍セオリー』でも詳説していますが、障がいのある求職者の就労動機は「しっかり配慮を受けながら、安定して働き続けたい」「仕事を通じて成長し、キャリアアップを図りたい」など、さまざまです。就労に対する本人の志向性と特例子会社が用意している職域・職務は必ずしも一致しません。それにもかかわらず、求職者は就労優先で応募してきますので、雇用後の時間経過とともに齟齬が発生するリスクは(労使)双方で高くなります。この問題は特例子会社での離職リスクを高めます。
一般傾向として、障がいのある求職者から見た特例子会社は、「職務が簡単=給与が低い=昇給もしない=キャリアアップはない=経済的自立もない=スキル発揮もない」というネガティブなイメージがあり、簡易な仕事でストレスなく、落ち着いて末永く働いていたいという障がい者には向いていますが、職務経験があり、一定のスキルと職務遂行能力のある障がい者からは敬遠されるという傾向は依然としてあります。
特例子会社が、先ほどお話しした二極化のどちらを目指すのか――そのための制度や処遇はどうなっているのかなどを明示した募集採用を企業側が行い、マネジメント体制も整合性のあるものを整備しなければ、求める人材の採用と定着・活躍は難しくなると考えられます。
職場での定着率アップは、障がい者雇用における大きな課題だ。仕事へのモチベーションが定着の有無を左右し、業務のスキルアップを目指す障がい者の中には特例子会社内での異動や親会・グループ会社への転籍を望む者もいるだろう。パーソルグループの特例子会社であるパーソルチャレンジには、本社の一般雇用部門に異動できる「キャリアチャレンジ制度」も設けられているが、スキルアップに伴うキャリアアップはどうなされるのだろうか。
洪 弊社では、親会社またはグループ会社に異動できる制度(キャリアチャレンジ制度)も整備されていますが、希望者は多くはありません。採用時の面接やその後の定期的な面談や評価制度を通して、適時、本人のキャリアプランについての確認をして、業務変更や昇格など、通常の人事制度に沿って応えています。希望者が多くない理由として、特例子会社では目標管理制度はありますが、ハードなKPIマネジメントや目標追求を実施していないこと、親会社などに異動せずとも、親会社と同様の処遇制度による総合職(特例子会社の総合職)登用が可能なことが挙げられます。もちろん、総合職に異動するためには、本人の希望とそれまでの評価実績、昇格試験などによる適正な審査があります。総合職に登用された社員は業務グループ、またはチームの管理職的ポジションにつき、組織の運営責任の一端を担うことになります。