障がい者雇用における仕事の見える化と細分化

 書籍『障害者雇用は経営課題だった!特例子会社の戦略的活用による雇用・事業拡大』には、「(特例子会社の)採用戦略でやってはいけないのは、法定雇用率を達成しようと、採用人数ありきで採用を進めること」と記され、「採用戦略には、主に障害種別や能力により採用対象を限定する」手法があるという。ここで言う「能力」とは具体的にはどのようなものか――パーソルチャレンジの雇用方法とともに、洪氏に詳しく聞いた。

 弊社の障がい者雇用では仕事を見える化し、細分化して、一業務を簡素化・単純化しています。難易度のかなり高い業務もこの方法で平準化・標準化し、個人ではなく、チームとして完結される仕事に改編しています。その上で、本人の担える範囲で業務量の多寡を設定していきます。可能な限り、高度な特定スキルに依存しなくてもいいように、そして、誰かが突然休んでも安易に代行が可能なようにしています。その分、マネジメントには個を調整し、全体として質的・量的に完結する調整力が求められますが、それを実現しています。

 弊社の言う「能力」や「スキル」とは、本人の自己責任による請負的なものではなく、細分化された業務を担える程度の基礎学力や安定して継続勤務できる職業準備性*5 、チームで作業をするための最低限のコミュニケーション能力、管理者の指示の理解・受容力などを指しています。そして、弊社ではどんな職域・職務にアサインしてもきっちりとしたトレーニングと教育を実施し、キャリアパスもサポートしています。

*5 職業準備性とは「職種や障害を問わず、働く上で必要とされるものを身につけ、準備すること。働くことについての知識理解・生活習慣・作業遂行の基本的な能力・対人関係のコミュニケーションスキルなど基礎的な能力、体力、労働習慣を身につけることが求められる」(パーソルチャレンジWEBサイト[障害者雇用に関する用語集]より)

 また、同書では、障がい者の働く環境の整備とマネジメントを行う人材を「運営管理者」と定義し、その運営管理者には福祉系のスタッフではなく、自社のラインスタッフの登用を提言している。

 弊社においてもスタートから一定期間は、福祉系のスタッフに依存していた期間があります。その間に福祉系のケア方法と企業組織のマネジメントを融合させる取り組みを試行錯誤してきました。弊社書籍『障害者雇用は経営課題だった!失敗事例から学ぶ、障害者の活躍セオリー』では詳細な記述をしていませんが、弊社固有のラインによるケアマネジメントツールを開発し、それを活用することでラインでの両立(業務とケア)を可能にしています。その他に、特例子会社の研修制度の枠組みの中で、管理職以外にも徹底した教育を実施しています(障がいの有無を問わない、ユニバーサルなコミュニケーション教育)。