業務を切り出し、ローテーションで在宅化する方法も

 たとえば、特例子会社に勤める障がい者は障がいのない社員との交流が十分に成し得ていないという調査結果*12 がある。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、「交流」が減らざるを得ないテレワーク導入の特例子会社も見受けられるが、パーソルチャレンジの障がい者雇用は、現在、どのような状況にあるのだろう。

*12 株式会社野村総合研究所 コンサルティング事業本部「障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査 調査結果」(2018年12月)より

 弊社の場合、「特例子会社の障がい者と障がいのない社員との交流が十分に成し得ていない」といった課題は発生していないようです。

 緊急事態宣言発令後の2020年4月から、8割を超える社員が在宅勤務に移行しましたが、在宅化しても業務はチームとして動いているため、問題があるとすると、障がい者かどうかではなく、障がい者と健常者が混在しているチーム運営の問題になります。なお、チームリーダーには障がい者も多数含まれています。弊社の場合、特例子会社ではありますが、誰にどのような障がいがあるのかを原則非公開としているため、誰に対してもユニバーサルな対応を標準としています。

 コロナ禍で解決しきれていない課題として挙がっているのは、在宅勤務可能な職務と不可能な職務の格差になります。こちらも障がい者かどうかではなく、障がい者と健常者が混在しているチーム運営の問題になります。

 在宅勤務では不可能な職務とは、主に、紙の帳票に依存する経理業務や、封入封緘や清掃などの現物・現地を前提にしている業務、仕様により在宅からアクセスできないシステムを使う業務などです。これらは、障がい者本人はもちろん、弊社単体でも解決が難しく、本来は企業グループとして解決していかなければならない課題です。現在の方針としては、業務を徹底的にテレワーク対応型に再編することと、現物・現地型の業務も一部在宅化可能な業務を切り出し、ローテーションで部分在宅化する方法を進めています。

 障がい者だけに求める課題ではありませんが、在宅勤務が増えることで、オフィス勤務よりもコミュケーション力、特に、自律性と、自らの発信力が強く求められます。オフィス勤務では、誰かが見てくれていたり、察してくれていることが多かったと思いますが、テレワークでは自らが発信していかなければ、意思の疎通はもちろん、適切なケア、配慮も受けにくくなります。

 弊社の「不安のマネジメント」やラインによる業務とケアの両立もオフィスでの出勤勤務を前提として構成されているため、テレワーク対応にアップグレードしていくことが急務になっています。

※本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティマガジン「オリイジン2020」からの転載記事「ダイバーシティが導く、誰もが働きやすく、誰もが活躍できる社会」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。