借入金にコベナンツが付いた
社員に副業“解禁”でも炎上

 財務省のデータに拠れば、株式会社の7割は、国税の法人税と地方税の法人事業税を1円も納めていません。連結決算を導入する超大企業ですら、66%が同様です。それは利益に対して課税する仕組だからです。

 国会議員時代に僕は、予(あらかじ)め財務省の担当者から説明を受けた上で、「法人税を1円も支払っていない企業はどのくらいの割合に上るか、御存知でしょうか」と、2011年2月8日の衆議院予算委員会で、時の菅直人内閣総理大臣に尋ねています。彼に代わって野田佳彦財務大臣が「全体の7割でございます」と答弁し、それに対して僕が、「法人の7割が法人税を払っていないということですね。即ち71・5%、7割を超える企業が法人税を支払っておりません。これは中小の零細企業に限った話なのでは無い訳です。資本金が1億円を超える企業でも、過半数の51・5%が1円も法人税を支払っておりません。これは連結決算対象の総法人数を除いての数値ですから、現実には、日本経済団体連合会=経団連や経済同友会に加盟する上場企業の約6割もが法人税を払っていないということです。この国会中継をテレビやラジオ、あるいはインターネットでお聞きの皆さんは、本当かとキツネにつままれているかと思います」と発言した言葉も含めて、議事録から削除されることなく10年後の今日も確認する事が出来ます( http://www.nippon-dream.com/wp-content/uploads/1aa4eff00be9af6f591d33ef9d2b6a41.pdf )。

 その後、2回に亘って2011年11月1日と2012年1月27日の衆議院本会議の代表質問でも同様に確認し、同様の答弁がNHKの国会中継で放送されています。

 故に余談ながら僕は、この理不尽な状況を改善する上でも、事業規模や活動量を基準に課税する「新しい発想の外形標準課税」へと抜本的に刷新すべきと提唱し続けているのです。

 赤字企業でも事業収入自体は存在します。而(しか)して、何処で何人働き、何を幾つ作って、何処で幾つ売れたか、瞬時に把握可能な時代です。

 ならば、老若男女を問わず全ての国民が支払う消費税と同じく、更には誰もが二酸化炭素CO2を排出するのと同じく、全ての企業が広く薄く外形標準課税で納入すれば、法人税率を現行の3分の1に引き下げても全体では逆に1割の税収増となります。事業展開しているそれぞれの地点で、事業量に応じて納税する「新税制」を確立すれば、これぞ21世紀のノーベル経済学賞!

 全国各地の自治体が支度金(バンス)も用意して工場誘致を実現しても、法人税は東京や大阪、愛知の本社登記地に支払われるから、多少の雇用と固定資産税が見込めるだけで、「地方の自律」は夢のまた夢。

 それは、GAFAに象徴される「無国籍企業」が、実際に事業を展開している国で税金を納めていない深刻な問題を合法的に解決する道でもあります。

 閑話休題。が、仮に「電通」が法人都道府県民税80万円ポッキリで済む「恩恵」に浴していたとしても猶、身の丈を超えたM&Aで「ビッグ5」の仲間入りを果たした巨大広告代理店の財務状況は極めて深刻です。また、借入金の一部に「コベナンツCovenants」と呼ばれる「財務制限条項」が課せられているのも気掛かりです。

 コベナンツとは、年度資金や事業資金を複数の金融機関が分担して貸し付ける「協調融資」に際し、財務健全性維持を求める契約条項。有り体に述べれば、債務者の財務状況に応じて債権者が契約解除を可能とする条項なのです。

 コベナンツ(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD154JF0V11C20A2000000/?n_cid=BRFR3010

 電通インターナショナルへと看板を付け替えた旧電通イージス・ネットワークの呼称に関しても説明を加えておきましょう。

 イージスAegisとはギリシア神話に登場する「守護神」ゼウスが娘の女神アテーナーに与えた、全ての邪悪・災厄を払う魔除けとしての山羊革=ゴートスキンを使用した防具アイギス Aigisの英語読みです。

 奇しくも「官邸の守護神」と呼ばれし東京高等検察庁の黒川弘務(くろかわ・ひろむ)検事長が2020年5月に辞職。翌6月には弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」配備計画も中止。名にし負う国際企業の電通グループたればこそ逆に、日本的な験(げん)を担いだのかも知れません。

 連結子会社の電通イージス・ネットワークを2020年9月25日に電通インターナショナルへと商号変更。広大な敷地内に駐箚(ちゅうさつ)アメリカ合衆国特命全権大使公邸も位置するロンドンのリージェンツ・パークから程近い複合施設リージェンツ・プレイスに、商号変更後も本拠地を構え続けています。が、こうした「ブランド・イメージ」堅持の努力も虚しく、純粋持株会社「電通グループ」は2019年12月期に続いて2期連続で2020年12月期の営業利益も純利益も赤字となりました。

 再び時計の針を戻して昨年11月1日、「電通、社員230人を個人事業主に 新規事業創出ねらう」の大見出しで「日本経済新聞」が記事を掲載しています。(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO6610376011112020916M00/

 それは、国内事業会社・電通の正社員全体の3%に当たる230人が「個人事業主」として「勤務」する「新しい働き方改革」。営業・制作・間接部門等、全職種の40代以上の社員約2800人を対象に募集。適用者は早期退職した上で、電通設立の新会社と10年間の業務委託契約を締結。電通時代の給与を基にした固定報酬に加え、実際の業務で発生した利益に応じてインセンティヴ報奨金も支給。兼業や起業も、他社との業務委託契約も可能。

 至れり尽くせりの好条件と思いきや、「競合他社との業務は禁止」の一文に、「“蟹工船”的働き方改革」だと「業界関係者」がSNSで一刀両断。TV各局と仕事可能なフリーランスの放送作家や映像ディレクターと異なり“廓(くるわ)の論理”を押し付ける“脱法リストラ”じゃね、とプチ炎上する展開となりました。

 無理からぬ批判です。年金・健保等の事業主負担、労基法の遵守と労災の刑事的・民事的責任から逃れた電通が、今度は胴元として「名ばかり個人事業主」を指揮監督する寸法なのですから。フリーランスとは自らの技能を提供する社会的に独立した自由業としての個人事業主。この形態で請け負った業務を遂行する人間がフリーランサー。その原義は、常備軍を擁する王族や貴族が有事の際に結成する傭兵団(フリー・カンパニー)の一員を意味します。無論、この場合のフリーは、ただ働きを意味する「無料」とは異なります。

「電通、本社ビル売却検討 国内最大規模の3000億円規模 コロナ禍でオフィス改革広がる」――。時流を先取りしたかの如き印象を与える見出しで「日本経済新聞」が速報したのは、コマーシャルの教科書として名高き「3時のおやつは文明堂」を彷彿とさせる今年1月20日午後3時5分でした。(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD184X60Y1A110C2000000/

 が、その「決断」は、西新宿に聳える東京都庁の“魔天楼”で「後手後手やってる感」を巧みに演じ続ける“緑の旗振りオバサマ”小池百合子都知事が好んで用いる羊頭狗肉な惹句「ワイズスペンディング」の本来の定義とも異なる、背に腹は代えられぬ“帳尻合わせ”に他ならぬ、と僕の目には映るのです。