数々の功績を残したトップリーダーたちは、「ネクストリーダー」に就任した際、何を考え、どう行動していたのか。連載第2回は、業績不振のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を持続成長できる組織に変革し、V字回復に導いた戦略家・マーケターの森岡毅氏に話を聞く。USJ退社後に「株式会社刀」を起業し、経営不振だった丸亀製麺やネスタリゾート神戸などを次々と立て直すなど、常に圧倒的な結果を出し続けるマーケティング精鋭集団のリーダーである。著書『誰もが人を動かせる!あなたの人生を変えるリーダーシップ革命』で「リーダーシップは生まれつきの能力ではなく、後天的に身に付けられる」と語る森岡氏は、リーダーになるまでの過程で、自身の特性や強みをどのように発見し、弱点をどう補ってきたのか。
子ども時代に得た原体験
「策を練ってみんなを勝たせること」に喜び
私はマーケターとしてキャリアを築いてきましたが、実はマーケターになりたいと意識する前から漠然と「経営者になりたい」と考えていました。今振り返ると、そのきっかけは子ども時代にあったように思います。
子ども時代は、自分がやりたいことをしたときに、世の中と大きなずれを感じることがありました。私としては興味のあることを徹底的にやっているだけなのですが、周囲から見ると強引で非常識なことばかりやる子どもだったと思います。同じ年頃の子どもたちとは波長が合わない。周りの大人にも眉をひそめられたり怒られたりすることもよくありました。
ただ、それでもたまに自分の中で興味を持ったことが、世の中の役に立って喜ばれることがありました。例えば、運動会のクラス対抗リレーで走る順番を決めるとき。誰を何番目にどう走らせると勝つ確率が高まるか、相手のオーダーなども考慮しながら作戦を考えることが得意でしたから、そういう勝負がかかったときには「森ちゃん、どうやったら勝てる?」とクラスメイトが相談してくれたりしました。
「策を練ってみんなを勝たせる」。そうすると、みなが非常に喜んでくれる。日ごろは周囲とうまくやるのに苦労していた私だからこそ、その「自分が必要とされる感覚」は飢餓感を満たし、子ども時代の貴重な成功体験として蓄積され、今につながっているように思います。
実際に将来のキャリアを考える時にも、この子ども時代の体験と喜びの延長線上で、人を統率して“勝負事に勝つこと”を仕事にできないかと考えるようになりました。勝負事が好きな人間は、戦国時代ならば、侍大将や城持ちを目指すようなキャリアになると思いますが、それを現代に置き換えれば、何になるか? 現代にも血は出ないですが企業間の戦いがあります。戦略を立てて、組織を統率して、業績を上げ、ライバル企業との競争に勝って生き残る。その仕事は「経営者」ではないかと考えたのです。
就職活動をするにあたって、神戸大学で師事した田村正紀先生に「経営者になりたい」と相談したところ、経営者になるには「ファイナンス」「マーケティング」「営業」の三つのルートがあるとのアドバイスを受け、それぞれを目指して活動した結果、大手銀行、大手総合商社、P&Gから内定をいただきました。