半導体争奪戦#6Photo:SOPA Images/gettyimages

半導体トップ10企業として、世界レベルの戦いを続けている唯一の日本企業がキオクシアだ。だが、主力のフラッシュメモリー事業に依存する経営は不安定。新規株式上場(IPO)手続きの再開が遅れる一方で、業界の合従連衡の機運が高まっている。特集『勃発!半導体争奪戦』の最終回では、上場延期や巨額投資で岐路に立っているキオクシアの行方を追う。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

上場手続き再開の行方
業績悪化で不透明に

 キオクシアの新規株式上場(IPO)の再開手続きが遅れている。

 同社が2月12日に発表した2020年10~12月期の連結業績は最終損益が132億円の赤字で、韓国サムスン電子や韓国SKハイニックスなど競合他社に比べて収益性の低さが目立った。

「中国ファーウェイへの出荷やコロナ禍など短期的な懸念は問題ではなく、NAND型フラッシュメモリーの事業の先行きに不安がある」。ある機関投資家は、キオクシアの20年10~12月期の赤字を見て、そう指摘した。

 当初は21年の年頭を見込んでいた上場手続きの再開が、一段と見通しにくくなっている。

 世界的な半導体不足の中で、ロジック半導体やアナログ半導体の争奪戦が激しくなっているが、キオクシアが扱っているNAND型フラッシュメモリーの市況は低迷している。この中で、キオクシアの事業構造がフラッシュメモリーの市況の変動に左右されやすいことが実績となって表れてきた。

「スマートフォン向けの需要は強く、データセンター市場は拡大しており、中長期的な成長トレンドに変わりはない」。キオクシア幹部は強がるが、新規上場を控え、今までのように「フラッシュメモリーの需要が拡大する」というシナリオだけで、投資家を納得させられるストーリーを描けるかどうかが問われ始めた。