脱炭素#12
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半導体不足で自動車メーカー各社が減産に追い込まれたことで、あらゆる業界が半導体の重要性と、その調達リスクにあらためて向き合うことになっている。半導体業界は売り手市場に傾きつつあるが、そんな半導体の恩恵を日本が受けるための「頼みの綱」となっているのが、パワー半導体だ。三菱電機や東芝はこぞって積極的な投資計画を出すが、その前には米インフィニオンが立ちはだかっている。特集『脱炭素 3000兆円の衝撃』(全12回)の最終回では、パワー半導体の勝者の条件をひもとく。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)

コロナ禍からの回復に冷や水をかける
半導体不足の衝撃

「半導体メーカーの地位が、かつてないほどに上がっている」。ある半導体メーカー幹部は、最近の半導体業界の世間からの“扱い”に驚きを隠さない。

 自動車のEV(電気自動車)化、ハイブリッド化、洋上風力産業の急拡大、省エネニーズの高まり……。主要国がカーボンニュートラル(炭素中立。二酸化炭素〈CO2〉の排出量と吸収量をプラスマイナスゼロにすること)を次々に宣言し、世界規模で“グリーン旋風”が巻き起こったことで、半導体業界が「わが世の春」を迎えようとしている。

 もともと、半導体業界にはここのところ追い風が吹いていた。

 2020年は新型コロナウイルスの感染拡大で業績不振にあえぐ業界が多い中、パソコンやデータセンターなど向けの需要が増え、市場が順調に拡大した。リモートワークやオンライン授業など、コロナ禍による生活様式の変化を味方に付けた形だ。

 今年以降も、第5世代移動通信システム「5G」の本格化などによって好調の波は続くとみられており、半導体装置メーカー大手の東京エレクトロンの河合利樹社長は「21~22年はビッグイヤーズになる」と断言しているくらいだ。

 だが、半導体メーカーの顧客側がこうした半導体市場の沸騰ぶりを認識したのは、意外に最近だったかもしれない。今あらゆる業界が、半導体の重要性とその調達リスクにあらためて向き合うことになっている。

 きっかけは、半導体不足による自動車メーカーの減産だ。

 まさに、世間に冷や水を浴びせる事態である。コロナ禍からの「経済復活」の象徴こそが自動車市場の回復だったというのに、自動車メーカーが半導体の供給不足に伴い、相次ぎ減産対応を余儀なくされているのだ。昨年12月には独フォルクスワーゲンが21年1~3月の減産を発表。今年に入ると、ホンダや日産自動車、SUBARUなど、日本勢も生産調整に追い込まれた。

 半導体とひとくくりに言っても、今回、自動車メーカーの間で激しい取り合いになっているのは、ハードウエアの制御を行う「マイコン」が中心だ。自動車の「走る・曲がる・止まる」をコントロールする半導体である。

 皮肉なことに、不足の原因は自動車の「急」回復にこそある。当初、コロナ禍で20年の自動車市場は最低でも19年比20%減に落ち込むと予想されていた。そのため、自動車各社は半導体の調達を一斉に絞ったのだが、大方の予想に反し、20年後半から自動車の需要が急回復。これで大混乱が発生してしまったのだ。