世界的に広がる半導体の争奪戦が連鎖の兆しを見せている。減産を強いられた国内外の自動車メーカーは「半年程度」の解消をにらむが、複雑な構造が絡み合う半導体不足は長期化が免れない。特集『勃発!半導体争奪戦』の#1では、熾烈な争奪戦が招く次の危機を解き明かす。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
メーカーに殺到する
半導体の買いだめ注文
「できるだけ早く届けてほしい」
半導体メーカーの自動車事業部門の担当者の元に、半導体商社から注文が殺到している。商社の担当者は必死だ。何しろ、半導体の在庫を確保して自動車メーカーへの供給責任を果たせなければ自分のクビが危ない。
ルネサスエレクトロニクスの真岡朋光執行役員によると、こうした注文の中には「安全在庫」を求める動きも散見されるという。実際に自動車メーカーがラインを維持するために必要な量を超えて、「買いだめ」注文が発生しているのは事実のようだ。
だが、足元で激化する世界的な半導体不足の要因はそれだけではない。新型コロナウイルスの感染拡大で発生したトイレットペーパーやマスクなど日用品の不足は生産能力の強化で乗り切れたが、半導体には、それとはまったく異なる構造がある。
車載半導体不足が大騒ぎになったのは2021年の年明けだ。トヨタ自動車が米国生産の1車種の減産を決め、1月中にはホンダや日産自動車も減産に乗り出した。昨年12月に減産を発表した独フォルクスワーゲンに加え、フォード・モーターなど世界の自動車産業が半導体不足で軒並み混乱している。
これをきっかけに勃発した半導体の争奪戦の要因をひもとくと、複雑な構造問題にぶち当たる。