いつまでも外注任せにすべきではない領域の一つに、UI/UXが挙げられる。顧客からのフィードバックをつぶさに捉え、顧客体験の改善をリードできる人材は、DXを支えるコア中のコアである。また、プロダクト開発の全体指揮が取れる人材(プロダクトマネージャー)や、事業提携・アライアンス等を通じて事業成長を牽引できる人材(ベンチャーアーキテクト)の重要性については、以前の記事でも紹介した通りだ。

 ITシステムに関しては、多くの大企業は外部ベンダーに外注しており、100%の内製化は難しい場合もあるだろう。それでも、外部ベンダーに適切なディレクションを出せるエンジニアや、中長期的には内製化に向けたクラウド導入等をリードできる人材は重要性が増す。

 新たなケイパビリティをゼロから構築することが難しい、あるいは著しく時間がかかる場合は、M&A等によって一気に獲得するという方法も有効だ。ただし、その場合は、PMI(Post Merger Integration)を滞りなく行うことが非常に重要だろう。

Q8. 企画をカタチにする過程で、だんだん夢がなくなり、妥協してしまう

 企画をカタチにする過程で、ユーザーからの反応や、予算面、法規制、技術上の限界などを受けて内容はさまざまに変化するものだ。ただし、妥協してよいポイントと、決して妥協すべきではないポイントがある。

 道中で何度も方向転換したとしても、コアバリューだけは曲げないことが重要だ。そこさえぶれなければ、提供方法、ビジネスモデル、あるいは付加機能などが多少変わっても「妥協」のうちには入らない。だがもし、コアバリューやターゲット層まで変わってしまう場合は、もはや別企画と考えたほうがよいかもしれない。

 そして、そのコアバリューを、発案者だけでなくターゲットとなる顧客層やステークホルダーにどれだけ腹落ちさせられるかが重要だ。「ビジネスとして成り立つのか、儲かるのか」といった議論はもちろん不可欠だが、こと新規事業においては、事業計画をどれだけ精緻につくりこんでも想定の域を出ることは難しい。このため、事業計画の確からしさ以上に、コアバリューそのものが周囲の人をどれほどワクワクさせられるかに尽きる。サービス責任者が「このサービスは絶対にいける、やるべきだ」という信念を持っているかということだ。担当者の情熱が底力となり、窮地を乗り切る場面を私は数多く見てきた。

 厳しい言い方をすれば、途中でだんだん夢がなくなるようなら、それまでの企画だったということかもしれない。大企業であれスタートアップであれ、周囲から何かを言われて簡単に妥協してしまうような企画に、大きな投資が集まることはない。サービス責任者は、常に自分自身に「個人資金を出してでもやり切りたいか?」と覚悟を問うべきだ。また、周囲の関係者は、情熱を持つ責任者がくれぐれも人事異動などで道を断たれることがないよう、十分に配慮するべきだ。2~5年単位の人事異動を導入している企業は多いが、ひとつの事業をやり切るには、少なくとも10年単位で取り組む必要があり、担当者は自身のキャリアを懸けるほどの覚悟が必要であることを付け足しておきたい。