まず役職定年制の実態を概観してみましょう。平成29年度「民間企業の勤務条件制度等調査」(人事院)によると、役職定年制がある企業は調査対象の16.4%ですが、500人以上規模の企業では30.7%で、そのうち今後も継続する意向の企業は95.7%になります。企業規模が大きいほど導入している企業の比率が高くなっています。

 役職定年年齢に設定されているのは部長級の場合、55歳が41%で最も多く、次いで57歳の21.2%です。課長級でも55歳が46.8%、次いで57歳の19.4%となっています。

 一方、2013年に施行された高年齢者雇用安定法で65歳までの雇用確保措置が義務付けられ、企業は定年制の廃止か定年の引き上げ、継続雇用制度などの施策を導入しなければならなくなりました。

 さらに今年4月1日から施行される改正高年齢者雇用安定法ではこれに加え、65歳から70歳までの就業機会を確保するため、70歳までの定年引き上げや定年制の廃止、70歳までの継続雇用制度などの措置を講ずる努力義務が新設されました。

 このように働く・働ける期間は長期化する傾向にあります。仮に55歳で役職を外れても、70歳まで働くとすればあと15年、75歳なら20年もあるのです。役職定年が来たくらいでモチベーションを下げている場合ではありません。

役職定年後でも生き生き働く人は
出世への執着を「成仏」させている

 役職定年でなくとも、官公庁では事務次官が出ると他の同期入省者は出向などで退官するのが慣例といわれています。銀行でもある程度の年齢になると、多くの人が関連会社などに出向となります。個人にとっては悲喜こもごもですが、組織運営という観点ではよくできた仕組みだと思います。

 そのなかで出向した後も生き生き働いている人を見ていると、共通点は「会社の中での出世競争はこれで終わり」と、気持ちを切り替えていることです。サラリーマンとして成仏した、といってもよいかもしれません。

 ある金融機関に勤務していた私の知人は最後に支店長を務めた後、関連会社に出向となりました。給与は大幅に下がりましたが、「それは前から分かっていたこと。こんな良い会社に出向できてラッキー」と言って前向きに働き、現在は海外拠点の責任者を任されています。

 日本生命を経てライフネット生命を創業し、現在は立命館アジア太平洋大学(APU)の学長を務める出口治明氏は、仮に毎年200人くらいの大卒社員を採用する大企業で、5年に1回くらいのペースで新しい社長が出るとすると、社長になれる可能性は1000人に1人で0.1%。残りの999人はどこかで左遷されるのだから、出世できなかったと嘆く必要はまったくないという趣旨の話を著書『還暦からの底力』で述べています。

 これは本当にその通りで、私の出身会社であるリクルートでも同期から役員になる人間は一人も出ませんでした(役員になれそうな優秀な人間がどんどん独立していったという事情もありますが)。

 役職定年を迎えたとき、社長や役員になれなかったと悔やむのではなく、「レースは終わった。次は何にチャレンジしようか」と前向きに気持ちを切り替えることが大切です。