リスキリングアマゾンやウォルマートなどの海外企業では、すでに従業員のリスキリングが行われています(写真はイメージです) Photo:PIXTA

デジタルトランスフォーメーション(DX)に欠かせない、既存人材の再教育「リスキリング」。アマゾンやウォルマート、AT&Tといった世界的大企業は、すでに多額の投資によってリスキリングを加速させている。日本企業が学ぶべきエッセンスが詰まっている、これら海外企業のリスキリングの実態について、リクルートワークス研究所の大嶋寧子主任研究員が解説する。

日本企業が海外企業の
リスキリングを学ぶ必要性

 前回は、企業がDXを成功させるためには、あらゆる立場の従業員にデジタルに対応した新たなスキルを獲得させる、「リスキリング」が不可欠であると指摘しました。

 DXを本格的に推進しようとすれば、デジタル技術を使って「どこで」「どのような」価値を生むのか、そしてそれを顧客に「どう届けるのか」というビジネスプロセス全般の見直しが必要になります。その結果、事業に関わるあらゆる人が、それぞれの持ち場でデジタルのデータや技術を用いて価値を生み出す方法を、新たに身に着ける必要が生まれます。

 実際に、生き残りをかけてDXを推進する海外企業は、「リスキリング」を成功のための欠かせない要素と位置付け、先駆的な取り組みを行っています。そしてそこには、日本企業が学ぶべきエッセンスがいくつも詰まっています。今回は、海外企業の事例から、これからの日本企業に必要なリスキリングのヒントを探っていきます。

デジタルスキルの
全体的な底上げを目指すアマゾン

 リスキリングの先進企業の一つが、世界的なデジタルジャイアンツの一角であるAmazon(アマゾン)です。同社は2019年7月に、2025年までに7億ドルを投じて米アマゾンの従業員10万人をリスキリングする計画を発表しています。これを従業員1人あたりに計算しなおすと、実に約7000ドル(2021年3月1日の為替レートで約75万円)となり、企業の従業員リスキリング事業としては最大規模と言われています。

 同社の発表によれば、具体的なプログラムには、技術職以外の従業員を技術職へ移行させる「アマゾン技術アカデミー(Amazon Technical Academy)」、テクノロジーやコーディングといったデジタルスキルを持つ従業員が機械学習スキルを獲得することを目指す「機械学習大学(Machine Learning University)」などがあり、デジタルスキルの全体的な底上げを目指していることがわかります。