従業員が円滑に社内異動できる
リスキリング3つの柱

 AT&Tのリスキリングには、いくつかの柱があります。その一つ目が、リスキリングを通じて、従業員が円滑に社内を異動していくための環境を整備したことです。具体的には、社内に存在していた多種多様な職務を、同様のスキルを必要とするものに整理統合し、それぞれの職務の遂行に必要なスキルを分かりやすく示しました。その上で、会社から見て重要であるスキルを保有している人や、そのスキルの習得に関わる講座でよい成績をおさめた人がより高い報酬を得られる制度を導入しています。

 二つ目は、従業員が自ら動いて、次のキャリアのためのスキル開発に取り組むよう促すツールを導入したことです。このツールを使うことで従業員は、今、社内にどのようなポストがあるのかを検索することができるだけでなく、その部門や想定される賃金についての情報、そのポストに就くためにどんなスキルを学習する必要があるのかといった情報を手にすることができます。会社もこのツールを使えば、社内にどのようなスキルを持つ従業員が、どのくらい存在しているかを把握することができました。

 三つ目は、オンライン上の訓練コースを開発したことです。外部の教育プラットフォームと提携し、WEB開発、データ分析、プログラミングなどで単位を取得できるコースを提供したほか、複数の大学と連携し、データサイエンスやサイバーセキュリティなどの学位を取得できるプログラムを用意しました。たとえば、ジョージア工科大学と連携したコースでは、エンジニア職に就くためのコースや、コンピュータサイエンスの修士プログラムを提供しています。そのうえで、リスキリングを行った従業員が、一定の期間、新たなポジションを試せる社内インターンシップ制度も設けました。

 2017年になると同社はさらに、ワンストップの学習プラットフォームである「パーソナル・ラーニング・エクスペリエンス」の提供を開始し、従業員の学習環境を一層進化させています。このプラットフォームでは、従業員は自分のスキルについて客観的な評価を得て、社内でこれから就くことが可能な仕事を検索できます。さらに、希望の仕事に就くために必要な講座を検索し、講座の予約や履修状況を記録する学習管理を行うことができます。

 AT&Tのリスキリングは、社内の新たな就業機会とそこで必要なスキルに関する透明性の高い情報を提供すること、適切な学びの機会を提供することを通じて、従業員が自律的にキャリアを描き、リスキリングに踏み出すよう側面支援するものといえそうです。