4月2日に発表された2021年3月の米国雇用統計では、雇用者数が7ヵ月ぶりの増加幅を記録し、雇用環境が回復軌道に復したことが確認された。背景にはワクチンの急速な普及に伴う人々の外出行動の持ち直しや、バイデン政権による強力なサポートがある。今後も力強い回復が続くことに期待が高まる中、リスクは本当にないのか。順調な回復を阻害する「落とし穴」を確認する。(伊藤忠総研 主任研究員 笠原滝平)
苦境が続いた飲食業を筆頭に
雇用が急増している背景
2021年3月の米国雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月差+91.6万人と市場予想(60万人台)を大幅に上回り、3ヵ月連続で増加した。さらに、過去2ヵ月分も合わせて15.6万人分上方改定され、今年に入ってからの増勢はこれまで見てきたものより力強いことがうかがえる(図表1参照)。
業種別に確認すると、生産関連では、減産が続く自動車製造業は減少したが、2月は寒波の影響で減少した建設業が復調したことなどにより、全体では3ヵ月ぶりのプラスに転じた。
雇用の大宗を占める民間サービス部門は、同+59.7万人と前月と同程度増加し、引き続き全体のけん引役となった。内訳では、飲食業や政府部門も含めた教育分野の増加が顕著であった。
後述するように、州政府による行動制約の緩和が進んでおり、人々の外出行動の持ち直しや学校の対面授業の再開が進展、それに伴って雇用が増えているとみられる。