イスラエルの医療研究者らは、新型コロナウイルス患者数千人分のデータを入手できて満足だった。その中にはコロナ感染症を発症し、緊急救命室(ER)に運び込まれたが、間もなく回復した63歳の男性もいた。当時は感染流行の初期で、この患者に施した治療は、まだ解明の進んでいなかったウイルスに関して極めて有益な知見をもたらした。通常なら、患者が高コレステロール血症でリピトール錠を服用中といった慎重に扱うべき医療情報を、プライバシー保護策を講じることなく共有するなどとは到底考えられないだろう。だがこの男性は実在せず、アルゴリズムが作り出した架空の患者だった。つまり、電子カルテなどの実在するデータセットから詳細な情報を取り出し、それをごちゃ混ぜにしてつなぎ合わせ、現実をおおむね映し出すが、本物の患者は一人もいない人工的な患者グループが作り出されていた。
コロナ研究で「架空患者」活用、成果は本物
実在する患者情報をもとにデータを合成する技術、医療のイノベーションを加速させるか
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