【キーファクター8:Be Agile(すばやく対応する)】
変化に応じてすばやく戦略の軌道修正を行う

 最後のキーファクターは、リスキリングを通じて、変化に素早く対応する力を獲得することです。ソフトウェア開発の現場では「アジャイル開発」という、要件定義や設計の段階で「作りこみ過ぎない」ことを重視する手法が近年注目されています。

 リスキリングプログラムで学ぶ対象は、デジタルテクノロジーです。そのテクノロジーが日進月歩で進化することによって、途中で学ぶ内容が軌道修正される可能性は十分あります。つまり、リスキリングを進めるにあたっては、アジャイル開発の発想と同じように、一度描いたリスキリングプログラムの設計図を「完成形」として扱うのではなく、状況変化に応じて何度でも描き直すつもりで臨むことが大事なのです。デジタルがもたらす変化をビジネスに昇華し続けるためには、自分たち自身も変化し続けなければなりません。

 ここまで、リスキリングプログラムを設計する上で欠かせない8つのキーファクターを紹介してきました。

 デジタル社会で日本企業が生き残るためには、「リスキリング」は避けては通れない道です。日本企業の未来は、リスキリングの先にあるのです。1社でも多くの企業、1人でも多くの人に、このデジタル社会の到来を機に、自らのスキルを進化させるための行動を開始してもらいたいものです。

(リクルートワークス研究所 アナリスト/研究員 孫亜文)

【参考文献】
リクルートワークス研究所「リスキリングする組織 デジタル社会を生き抜く企業と個人をつくる」