【キーファクター6:Invest(投資する)】
学習のために時間と資金を投下する

 海外企業がリスキリングに取り組む最大の理由は、リスキリングによるデジタルスキルの獲得が、ほかの手段(採用や退職勧奨など)と比べて、安価でスピーディだからだと言われています。

 もちろんリスキリングに取り組むと、そのプログラムを作る費用に加え、一定期間、一定の人が今の仕事に注力していた時間をリスキリングに振り分ける必要があります。それによって生じる業績への影響、という意味でのコストもかかります。しかし、リスキリングはこれからやって来るデジタル時代に向けて必要な投資です。コストがかかるとしても進めていくという全社的な意思決定をし、腹をくくることが必要になります。

 また、リスキリングがうまく行われなかった場合、日本企業では、DX後に、価値を生むことができなくなった従業員を長らく抱え続けなければならないという、別のコストが発生することも予想されます。中長期的なコストとリターンを考えて、しっかりとした投資を行いたいものです。

【キーファクター7:Shift(柔軟に変化する)】
ラーニングカルチャーを社内に醸成する

 リスキリングを通じて、組織全体に「学習する」習慣を醸成できるようになります。

 リスキリングは、組織に3つの能力をもたらすと考えられます。1つは、新しいことを学ぶ前に古い前提や価値観を自ら捨て、新しい知識や概念が定着する余白を生む行為である「アンラーニング」の能力。2つ目は、変化に直面したときに柔軟に自ら変わろうとする意志を意味する「アダプタビリティ」。そして3つ目は、新しい職務においても引き続き期待される役割を全うしようとする意欲、「アカウンタビリティ」です。

 これら3つの能力は、組織が「ラーニングカルチャー」を持つための土台になります。いま騒がれているDXだけでなく、これからも未来永劫、企業はさまざまな変化に直面し、自らのありようを変えていくことが必要です。その時に、ラーニングカルチャーがあることがその組織の生き残りに大いに資することでしょう。