新入社員の最初のゴールは
「信頼される人になる」こと

―― それは、岩瀬さんの本のテーマ「信頼される人になる」ための心がけでもあるわけですね。

岩瀬 そうです。本に書いた内容すべてに通じるのは、結局、「どうすれば人から信頼される人になれるか?」です。まだ経験が浅い新入社員の中には、「そんなの、嘘をつかずに真面目に働いていれば信頼されるんじゃないの?」と軽く考える人もいるかもしれません。けれども、信頼を得るというのは、そう簡単なことではありません。

「この人と仕事したい」「この人に大事な仕事を任せたい」と思ってもらえる人は例外なく、たくさんの努力を積み重ねています。それだけに、「これだけやれば信頼されますよ」といったアドバイスはできないと、僕は思っているのです。

講演会などではよく、「みなさんの周りにいる信頼されている人を思い浮かべてください。そういう人に共通する特徴はなんですか?」とあえて聞くようにしています。すると、「時間を守る」「約束を守る」「嘘をつかない」「人の悪口を言わない」「仕事をきっちりやる」といった、いろんな要素が出てきます。

――「返事が早くて丁寧」「気配りができる」「口が堅い」など、信頼できる人の条件って、確かにいろいろあります。

岩瀬 とても一口では説明できませんよね。そのうえで、あえてまとめるとしたら、「相手がこうしてほしいと思っていることに、きっちり応えられる人」だと思うのです。仮に、自分の力だけで応えられないとしても、早い段階で正直に周りに伝えて、助けを求められる人は信頼されます。

こうして話すと、簡単なように聞こえるかもしれませんが、いざ自分がやる立場になったとして考えてみてください。上司から大事な仕事を任されたとします。その仕事を達成するために必要なことを、1つ1つきっちり遂行していく判断力、行動力、想像力、コミュニケーション力など、さまざな能力が求められるのです。

そういうことが自分でできるようになるために必要な要素を詰め込んだのが、『入社1年目の教科書』『入社1年目の教科書 ワークブック』なのです。本の内容を1つ1つ実践して身につけて、「この人に任せたら大丈夫だ」と思ってもらえるようになれば、どんな分野でも活躍できる人になれるはずです。

令和も平成も変わらない、<br />リーダーが実践する「人の育て方」岩瀬大輔(いわせ・だいすけ)
ライフネット生命保険株式会社創業者
1976年埼玉県生まれ。1997年司法試験合格。1998年、東京大学法学部を卒業後、ボストン コンサルティンググループ等を経て、ハーバード大学経営大学院に留学。同校を日本人では4人目となる上位5%の成績で終了(ベーカー・スカラー)。2006年、副社長としてライフネット生命保険を立ち上げ、2013年より代表取締役社長、2018年6月より取締役会長に就任。同年7月より18の国や地域に拠点を有するアジア最大手の生命保険会社であるAIAグループ(香港)に本社経営会議メンバーとして招聘される(いずれも2019年退任)。2020年よりスパイラルキャピタルのマネージングパートナーに就任、テクノロジーで業界変革や産業創出を行う企業の支援を行う。また、ベネッセホールディングス、メドレー等の社外取締役も務める。著書は『入社1年目の教科書 ワークブック』(ダイヤモンド社)、『ハーバードMBA留学生―資本主義の士官学校にて』(日経BP社)、『生命保険のカラクリ』『がん保険のカラクリ』(共に文春新書)、『ネットで生保を売ろう!』(文藝春秋)など多数。

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