令和も平成も変わらない、リーダーが実践する「人の育て方」

この春、新入社員を迎えて、緊張感が高まっているリーダーやマネージャーも多いのではないだろうか。テレワークの場合は、コミュニケーションのとり方に戸惑うこともあるだろう。そういう時こそ活用したいのが、多くの企業で新人研修のテキストとして採用している『入社1年目の教科書』『入社1年目の教科書 ワークブック』だ。
「立場が上の人が言ったことを、現場が素直に受け入れてくれるとは限らない」と話すのは、さまざまな会社でリーダー経験を持つ著者の岩瀬大輔さんだ。では、人に信頼され、部下がついていきたいと思うリーダーは、どのように人を育てているのだろうか? 上司と部下のコミュニケーションツールとして、『入社1年目の教科書』をどう使えばいいのだろう? 岩瀬さんにアドバイスしてもらった。
(取材・構成/樺山美夏)

『入社1年目の教科書』を、
入社10年目のリーダーはこう活用している

――『入社1年目の教科書』は、新入社員だけでなく、入社10年目くらいのリーダークラスの人たちにも多く読まれているそうですね。リーダーはこの本をどう活用しているのでしょうか。

岩瀬大輔(以下、岩瀬)部下に言いづらいことや、教え方が難しいことを、『入社1年目の教科書』を通して伝えるために活用している人が多いと聞いています。「第三者」が言っている、というのがポイントかもしれません。

例えば、上司が部下に言っても耳を傾けないのに、外部講師が研修で同じことを話すと素直に聞いたりする、という経験はありませんか? 僕自身、そういう経験があって、「ずっと部下に話していたことなんだけれど…」と、複雑な思いをしたことがありました(笑)。

また、こういう時代ですので、「本音」が言いにくいこともあるでしょう。

この本には「目上の人を尊敬せよ」という項目があるのですが、上司がこれを言ったら何かのハラスメント…? と誤解されるかもしれません。

社会人の勉強についても同様です。若いうちにやっておいたほうが本人のためになるから教えてあげたいけれど、自分からは直接言えない。そのような「大切なこと」を伝えるツールとして、『入社1年目の教科書』を役立てているのではないかと思います。

―― 岩瀬さんの本を、研修や勉強会のテキストとして使っている会社や組織が多いのも、そこに理由がありそうですね。

岩瀬 それもやはり、会社や組織全体でこの本を読んで、「共通言語を持つこと」に意味があると考えているからだと思います。日本は従来、言わなくても察する文化、空気を読む文化でした。

でも今は違います。育ってきた環境も価値観もさまざま、多様性の時代です。言葉にしなければ、伝わりません。コロナ禍で同じ場所にいることさえ難しくなっている今、同じ空気を感じることさえ困難です。

であれば、ただ仕事の進め方だけを伝えるだけでは足りないかもしれません。なぜそれをやるのか、それをやるとどんな世界が待っているのか。『入社1年目の教科書』は「仕事のコンテクスト(背景)を伝える教科書だ」と言われたことがありますが、まさに今、新入社員に対してリーダーがするべき仕事は、コンテクストを伝えることだと思います。