集中力が落ちた。
あの頃は、もっと没頭できたのに──
私たちは今、スマホやPCに1日平均11時間を費やしていたり、リモートワークによる働き方の変化に追われていたりします。
「人のパフォーマンスを可視化するメガネ型デバイス JINS MEME」「世界で一番集中できる空間 Think Lab」などを手掛けてきた井上一鷹氏の著書『深い集中を取り戻せ』では、集中のプロとして、「これからどのように働けばいいのか」「どうやってパフォーマンスをあげるのか」を語ります。
脳科学的に、「やらされ仕事は4ヵ月しか続かないけれど、やりたいことは4年続く」と言われます。あなたが、夢中で何かに没頭できた体験。やらされ仕事ではなく、自らやってみようと思えたこと。何が原因かわからないけど、いつの間にか、『深い集中』が失われたすべての人へ、ノウハウをお伝えします。
プライベート空間と「間」を置く
在宅勤務中には、家族との領土問題などが起こります。
単身でワンルームの場合、仕事場所が自分1人の趣味などの場所を侵食することがあります。2人以上の家庭の場合も、家族と仕事を持ち込んだプライベート空間のせめぎあいが、それぞれ悩みの原因です。
特にワンルームで過ごしている人は、ソファやベッド、趣味のものが目に入ってくることで意志を保つことが難しくなるはずです。
没頭して作業したいときには、視野周辺の情報は邪魔になります。
これらは、「なければないほどいい」というのが結論です。
これを前提とし、ベッドやソファを見ないように机に向かえる配置にすることが大事です。
シンプルに間の仕切りを設計しなければなりません。
また、ベッドを見ないようにすると、おのずと壁に向かって仕事をすることになる人が多いと思います。
そうすると、「ゆらぎ」が生まれないという問題も起こってきます。
次に、2人以上や2部屋以上のパターンです。
「パーソナルスペース」という考え方をご存じでしょうか。
これは人間関係の種類によって、人と人との距離が異なることを示した研究です。コロナ禍により流行した「ソーシャルディスタンス」も、この考え方です。
当たり前のことなのですが、コミュニケーションする相手によって距離を変えて、我々は生きています。
そうすると、在宅勤務によって起こる問題は、次のとおりです。
“社会空間としては仕事モード(120センチ以上離れている感覚)なのに、物理空間では家庭モード(45センチくらいの距離)で過ごしている。”
そんな状況が生まれます。一般的に、オフィスのデスクやイスは、他の人と120センチ以上離れるように配置されています。
しかし、家庭のダイニングテーブルなどは、横の人が45~60センチ程度になる距離で配置されていると思います。
ソファに座っているときは、さらに距離が近くなるでしょう。
これらは、「リレーション(家族や友人との時間)」のタイミングであればまったく問題ないのですが、「ワーク(仕事の時間)」のときには、深い集中に入ることはなかなか難しくなります。
距離の問題だけでなく、家族が視界に入ったり、声や物音が聞こえてきたりするだけでも、仕事モードとのギャップが生まれてしまうでしょう。
深い集中のためには、極めて大事な作業や打ち合わせのときだけでも、家族との「間」を空けられる空間が必要です。1日2時間ほど、時間の「間」を作ることも大事です。
このテーマを深く考察しているチームである楽天ピープル&カルチャー研究所が発表している考え方に、「三間」という概念があります。「仲間、時間、空間」の3つです。
「仲間」をつなぎ、「時間」を区切り、「空間」を整えることで、人が本来の力を最大限発揮できる環境になると語られています。
そしてその本質は、その三間の間を埋める、「隙間」であるというのです。
「仲間、時間、空間」という重要な外的環境と自分との間に、4つ目の間としての「隙間」を持てないと本来の力を最大限活用できないのです。
移動などの隙間がなくなったことは、大きな損失なのかもしれません。それを取り戻しましょう。
株式会社ジンズ執行役員 事業戦略本部エグゼクティブディレクター 兼 株式会社Think Lab取締役
NewsPicksプロピッカー(キャリア)。
大学卒業後、戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトルにて大手製造業を中心とした事業戦略、技術経営戦略、人事組織戦略の立案に従事後、ジンズに入社。商品企画部、JINS MEME事業部、Think Labプロジェクト兼任。算数オリンピックではアジア4位になったこともある。
著書『深い集中を取り戻せ』(ダイヤモンド社)が好評発売中。