国土交通省は3月23日、2021年1月1日時点の公示地価を公表した。コロナ禍で2度目となる今回の地価公示は、大方の予測通り全面下落となった。そのポイントをまとめると下記の4つとなる(:以下太字は筆者の解釈)。

(1)全用途平均(主に公表されている住宅地、商業地だけでなく工業地、林地などを含む平均)は2015年以来6年ぶりに下落:地価の全体の傾向は下落に転じている

(2)商業地は三大都市圏でいずれも2013年以来8年ぶりに下落:海外からの投資マネーなどが入りやすい商業地の地価下落が特に鮮明である

(3)住宅地は東京圏が8年ぶり、大阪圏が7年ぶり、名古屋圏が9年ぶりにおのおの下落:住宅地価の下落は圏域によっても商業地との比較においても若干タイムラグがあり状況が異なる

(4)地方圏では、地方4市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)で上昇が継続(上昇率は縮小)、地方4市以外では住宅地が2年ぶり、商業地は3年ぶりに下落:地方圏の地価は大規模政令市で堅調だがこれから都市圏の影響が波及して地価が下落する可能性がある

 地価公示はもともと経済政策的な意図が反映される指標であるため、例えばバブル期などでは地価高騰を抑制するために上昇率を低めに算定したり、反対に資産デフレ期では地価下落の鮮明な地方圏での下落率を小さくしたりする傾向がある。巷間、「不動産鑑定士が鉛筆をなめて地価を評価する」うんぬんなどとやゆされるのは、そういった政策的な意図が多分に含まれているためと解釈される。

 では6年ぶりに全面的な下落傾向に転じた今回の地価公示と、実際の地価動向には何か違いがあるのかについて考察してみよう。